過激なブログで話題を集めている鹿児島県阿久根市の竹原信一市長。一昨年の就任早々から議会と激しく対立し、一度失職。出直し選挙で再選して以来、公務員批判をエスカレートさせ、大暴走している。3月議会では審議ボイコットという前代未聞の挙に出た。阿久根の事例は、日本社会の自治の危うさを象徴するものだ。

「支援者からも“策士、策におぼれる”と言われてしまいました。今は虚しさでいっぱいです」

 こう唇を噛むのは、鹿児島県阿久根市の松元薫久市議。4月19日の市議会で、3人の市長支持派議員とともに市長不信任案を提出、代表して提出理由を述べた。しかし、採決では4人とも反対票を投じ、市長への不信任案は全会一致で否決された。松元市議は「議会の構成を変えたいと思い、議会解散を狙って出した」と説明するが、わかりにくいこと極まりない。駆け引きの範疇を超えている。

 いまや日本で最も有名な市長といえば、阿久根市の竹原信一市長である。一昨年8月の初当選直後から自らのブログ上で議員や市職員組合を激しく攻撃し、議会から2度不信任されて失職。

民主主義揺るがす暴走市長<br />阿久根市の覚めない悪夢

 だが、昨年5月の出直し市長選で激戦を制して再選を果たした。「わずか1年足らずで評価を下すのは早いのでは」との市民の思いが投票行動に表れたものと思われる。

 ブログ市長はその後、自らの意に沿わない市職員を処分するなど、強権をいっそう振るうようになった。強引な市政運営に拍車がかかり、反市長派議員(12人)との関係はさらに悪化。抜き差しならぬ状態が続いていた。

 予算案を審議する3月定例会で両者の対立は臨界点を超えてしまった。もっとも、一方の側の攻撃がエスカレートし、常軌を逸したものになっていったのが実情だ。ブログ市長が議会への出席をボイコットし、幹部職員にも議会側への説明を禁止する前代未聞の行動に出たのである。予算編成権を握る執行部が議決機関の審議に応じないなど、本来、ありえない話である。法律が想定していない行為で、議会制民主主義そのものを破壊する暴挙といえる。

 ブログ市長は議会への出席拒否を続ける一方で、3月14日には市民懇談会を開催した。詰めかけた約800人もの市民に対し、ボイコットの理由を「議会との駆け引きと歪曲報道を続けるマスコミへのお仕置き」と説明した。そして、「必ず、阿久根をよくします。やり方はお任せください」と、大見得を切った。

 結局、2010年度予算案は市長の説明がなされぬまま、議会側が減額修正し、可決された。これで一件落着とはならなかった。反市長派議員が議会報告会を開催したところ、ブログ市長が会場に突然、姿を現した。そして、驚く市議たちを尻目にマイクを握り、市職員の高給ぶりを批判する持論を展開した。そのうえで、壇上の市議たちに「あなたたちは市政に参加させません」と言い放った。会場内には怒号が飛び交い、つかみ合い寸前となった。