「大衆への拡大路線を敷くのか、トレーディングの利用者を中心とするのか、ネット証券は今、大きな分岐点を迎えている」

 11月に開かれたインターネット証券大手、楽天証券の決算説明会で、あるスライドを横目に楠雄治社長がそう力を込めた。

「投影のみ」と記されたそのスライドには、アクセス別の日本株約定件数割合の推移が示されていた(上図参照)。2012年6月に10%だったスマートフォンアプリ経由の取引が大幅に拡大し、15年8月には初めて30%に到達した。しかも、15年の新規口座開設者のうち、実に52%がスマホアプリを利用しているというのだ。

 楠社長は「アベノミクスが始まったころから投資初心者が増えており、その中心はスマホの利用者だ。勝負は『入り口』に移っている」と明かす。

 その「入り口」を押さえるため、楽天証券などは、遊び感覚で株価の上げ下げを予測する「あすかぶ!」という投資初心者向けアプリを開発して、実際の株取引へと誘導する呼び水にしている。

 売買頻度が高く、収益性の高いデイトレーダーの獲得合戦を繰り広げてきたネット証券業界も、ここにきてスマホを利用する若い投資初心者の獲得に本腰を入れているというわけだ。鍵を握るのは、業界を席巻するあるブームだ。