メールの便利さに甘んじ
とんでもないトラブルに

 今年も残すところわずかになりました。私は毎年、クリスマス前から年明けまで、少し長めの休暇を海外で過ごすことを恒例としています。この時期の休暇は、私にとっていわば“命の洗濯”のために欠かせないものなのです。

 ところが、この時期はわが社の決算期でもあり、期末にあたる12月と期初にあたる1月は他の月に比べてやることがたくさんあります。そんな時に、社長の私が年末年始に2週間もオフィスにいないのはいかがなものか、と思う社員もいるでしょう。それは重々承知の上で、会社設立の時からこのスタイルを維持しています。

 そんなわけで、海外にる時いつも感じるのが、メールの存在のありがたさです。電話とファクスしかなかった時代は、日本との時差を気にしてわざわざ真夜中に起き、会社に電話していたものですが、メールなら相手の起きている時間を選ばずとも用件をやり取りすることができるのですから。

 しかしながら、一方でメールの便利さに頼ったばかりに、とんでもないトラブルになってしまったことが最近ありました。

 ある地方のクライアントとの仕事でのことです。その会社は東京から遠い場所にあり、予算も限られているため頻繁に顔を合わせられない中、主にメールで連絡を取り合いながらのプロジェクトスタートとなりました。

 ただでさえ初めての取り組みであり、お互いのことがよく理解できていない状況で、案の定、メールを中心としたコミュニケーションでは少しずつ話の内容がかみ合わなくなって行き、そしてついに、大きなトラブルが起こってしまったのです。

 トラブルがなぜ起こったか、それについてはお互いに相手側が原因という認識を崩さず、いつの間にかメールでも感情的な文章が飛び交うようになり、とうとう双方の間に大きな不信感が席巻する事態に陥りました。

 そんなやり取りを見かねた私は、当事者である担当者に一度クライアントに電話をするようアドバイスしたのですが、時すでに遅し、もはや電話では修復不可能なレベルの溝ができ上がってしまっていたのです。