一休創業社長、ヤフーに事業売却の「男の引き際」ヤフーの宮坂学社長(左)と一休の森正文社長。2015年の秋頃から話し合いを重ね、TOBに至った

 ヤフーは12月15日、宿泊予約サイトなどを運営する一休に対して、株式公開買い付け(TOB)を実施、2016年2月に100%子会社化を目指すと発表した。

 買収額は約1000億円の見通し。発表前の一休の時価総額は約800億円だから、今回の買収は金額だけを見れば割高な印象だ。

 しかし、ヤフーにとって今回のディールは、“おいしい”話だ。

 まず、宿泊予約サイト「ヤフートラベル」は、「楽天トラベル」や「じゃらん」の後塵を拝している。一休は、こうした大衆向けサイトとは一線を画し、高級なホテルや旅館に特化して4期連続の増収増益と絶好調だ。

 現在は1600軒の宿を掲載、会員数もプレミアム志向の顧客を中心に400万人を突破しているほどで、ヤフーにすれば喉から手が出るほど欲しい案件だった。

 さらに、成長が期待されている飲食店予約サイトにも強みがある。

 今、世界では飲食店のネット予約ビジネスが急成長しており、今後、日本でも本格化するとみられている。こうした分野でも一休は、「ぐるなび」「ホットペッパー」のような大人数の宴会向けではなく、記念日や接待などで使う高級店に特化し、差別化に成功している。

 こうした伸びしろの多い一休を傘下に収めることで、「高級から一般向けまで、全てのセグメントで品ぞろえを充実させる」(宮坂学・ヤフー社長)。

 そのためブランドは統合せず、それぞれのサイトは独立させたまま運営。ヤフーはビッグデータを駆使して一休の見込み客を見つけ出し、送客することでシナジーを高めていくとしている。