東京ドームシティの“黄色いビル”の6階に2014年7月にオープンした「宇宙ミュージアムTeNQ(テンキュー)」。宇宙を感動する体感型ミュージアムとして、子どもから高齢者まで幅広い客層から人気を集めている。ミュージアム内に東京大学の研究室があるのも特徴で、楽しくスリリングな展示は来訪者を飽きさせない。この「TeNQ」に企画の段階から参画し、ディレクションを担当したのは丹青社の洪 恒夫。その課題解決のプロセスを聞いた。

知的エンターテインメントとして
楽しくスリリングな施設を

エンターテインメントと学術文化の要素を融合、<br />マインドストーリーを軸に事業主の経営課題を解決洪 恒夫(こう・つねお)
プリンシパル クリエイティブディレクター

ミュージアム、テーマパーク、博覧会、展覧会など幅広い分野の施設プランニング、デザイン、プロディースを手がける。東京大学総合研究博物館特任教授として、ミュージアム・展示等の可能性の実践型研究を推進している。主な実績に、「ハウステンボスアトラクション」「愛・地球博国際赤十字・赤新月パビリオン」「上海万博日本産業館」「JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク」「TOTOミュージアム」「相鉄デザインブランドアッププロジェクト」など。日本ディスプレイデザイン大賞、日本空間デザイン賞大賞など受賞多数。

「私たちの業務は事業主からの要望があってスタートし、それに特注的に応えてゆくのが特徴です。ただし、言われたものをつくるだけでなく、その装置が事業主の経営課題を解決しなければ意味がない。事業を成功に導くため、お互いのプロの領域を擦り合わせながら“合わせ技”で力を発揮してゆく。その意味で私たちはまさに事業のパートナーなのだと考えています」そう語るのは、ディレクションを担当した洪恒夫である。

「宇宙ミュージアムTeNQ」の企画が始まったのは2011年。東京ドームシティが新たな魅力となる施設の可能性を検討する過程で、洪は施設コンセプトの企画協力から参加した。

 最初からテーマが宇宙と決まっていたわけではない。野球場、遊園地などの娯楽施設、温浴施設、屋内型キッズ施設という事業を展開してきた東京ドームが、次に打って出る事業について模索する中、「教育に資するもの」という軸があった。宇宙というテーマは、エンターテインメント的要素と教育的要素を入れやすく、子どもから高齢者まで幅広い層に訴えることができるという利点がある。そのため宇宙をテーマとした施設として、エンターテインメントと学術文化の要素をハイブリッドしたものを目指すことになったのだ。

「単なる宇宙ミュージアムではなく、知的エンターテインメントとして楽しくエキサイティングでなければならない。そう考えて、今までにない施設のスタイルを提案しました」。それが、東京大学の研究室をミュージアム施設に持ち込むという画期的な試みである。