10年ぶりの快挙で
かつてなく盛り上がった1月場所

「日本出身」琴奨菊の快挙が国際化した相撲を面白くする

 最近のスポーツにまつわる注目ワードは「ルーティン」だろう。

 昨年はラグビーW杯で活躍した五郎丸歩が行うゴールキック前のルーティン「五郎丸ポーズ」が注目を集め、誰もが真似をするようになった。そして今は、1月場所で優勝した大関琴奨菊が取組前、最後の塩まきの時に行う上体を後方に大きく反らせるルーティンが話題になっている。その動作が2006年トリノ五輪で金メダルを獲得した女子フィギュアスケーター・荒川静香のイナバウアーに似ていることから「琴バウアー」とか「菊バウアー」と呼ばれるようになった。

 もっとも、ルーティンは多くのアスリートが行っている。有名なのはイチローで、打席に入って構える前の一連の動作がそうだし、ロッカールームで過ごす時やウォームアップの時も同じ動作や行動をするようにしているという。朝起きた時から夜寝るまで、すべてルーティンといっていいほどなのだ。

 ルーティンには、緊張し我を忘れそうな場面でも、決められた動作をすることによって通常の自分を取り戻し、平静を保つ効果があるといわれている。注目されるのは、それを行なうアスリートが大活躍をしたり、印象に残る動作だったりするからで、トップアスリートは誰もが自分なりのルーティンがあるようだ。たとえばプロ野球選手は打席で毎回ほぼ同じ動作をして構えるし、プロゴルファーも決められた動作の後にショットを打つ。

 琴奨菊が上体を反らせるルーティンを始めたのは2011年の名古屋場所からだが、成績が振るわない間はさほど話題にならなかった。今回注目され「琴バウアー」といった呼び方をされるようになった(流行語大賞候補になるともいわれている)のは、いうまでもなく、琴奨菊が日本出身力士として10年ぶりの幕内優勝という快挙を成し遂げたからだ。

 ともあれ1月場所の盛り上がりはすごかった。とくに11日目に琴奨菊が横綱白鵬を破り、全勝をキープし優勝争いのトップに立ってからは、普段は大相撲をあまり観ない人も取組を注目するようになった。国技館に詰めかけた観客は琴奨菊の一番を固唾をのむように見つめ、勝てば大歓声、13日目に豊ノ島に負けた時は落胆のため息。14日目に優勝争いのライバル白鵬が稀勢の里に敗れると、また大歓声が起きた。