国内最大の感染症とされる肝炎の総合対策を盛り込んだ法律が2009年11月に議員立法で成立し、2010年1月から施行された。4月から医療費助成の拡充、治療における自己負担限度額を引き下げた。そもそもC型肝炎とはどういう病気なのか、そして今後の課題や対策とは。武蔵野赤十字病院の泉並木副院長に話を聞く。

肝臓は自覚症状がない『沈黙の臓器』
気づいたときには手遅れの場合も

潜在患者数は100万人から200万人?<br />約6割が感染経路不明という「C型肝炎」の恐怖泉 並木(いずみ なみき)/東京医科歯科大学医学部卒業後、同大学付属病院勤務を経て武蔵野赤十字病院へ。現在、同病院の副院長・消化器科部長であり東京医科歯科大学医学部臨床教授、近畿大学医学部客員教授も兼任。厚生労働省B型・C型肝炎治療標準化研究班委員。

「自分だけは大丈夫ってみなさん思ってらっしゃるんですね。しかし、それは何の根拠もなくて、ある日突然症状が出たときには手遅れ。肝臓は、『沈黙の臓器』といって、全然症状がないのが特徴ですから」

 こう述べるのは武蔵野赤十字病院の泉並木副院長だ。

 C型肝炎とは、C型肝炎ウイルスに感染して起こる肝臓の病気。血液によって感染し、最悪の場合、最終的に肝硬変や肝臓がんになって死に至るケースも少なくない。

 1992年にきちんとしたC型肝炎の検査ができるようになるまでは、輸血によって感染した患者さんが最も多い。1992年以降、輸血による感染はほとんどないが、それ以前に輸血を受けたことがある人は、C型肝炎に感染している恐れがある。また、輸血以外の感染経路としては、注射針の回し打ち、ピアス、入れ墨、タトゥーなどによって人の血液が付着した針が感染源になる。入れ墨をしている人や、薬の回し打ちの経験がある人は、C型肝炎に感染している可能性も否定できない。

 さらに泉氏は、感染経路や自覚症状について、以下のような問題点を指摘する。

「C型肝炎と言われている患者さんの約6割が、実際にどこから感染したか色々調べてみても、全く輸血も受けたことがない、針を注射したこともないという感染源が不明の状態にあります。日常生活の中で血液が付着するような行為は多々あるので、自分が輸血や手術を受けたとか、あるいは針の注射をしたことがない、という患者さんでもC型肝炎にかかっている可能性は十分にあります。

 また、感染していても全く自覚症状がありませんし、『肝機能は正常』ということも少なくありません。ですから、毎年会社の健診や健康診断を受けておられて、1回も肝臓が悪いと言われたことがないにも関わらず、C型肝炎に感染しているという方が非常に多い状況です」

 現在、日本におけるC型肝炎の潜在患者数、つまり、本人が気づかないうちにC型肝炎ウイルスに持続感染している人は、100万人から200万人と推定されている。この潜在患者数についても泉氏は、次のように言及する。