少子化などで国内市場の限界が見え始めた現在、急成長を続ける中国、インドなどの新興国市場の存在が大きくクローズアップされている。実際、日本国内の厳しい競争を勝ち抜いてきた製品やサービスに対する新興国の需要は決して少なくない。しかし、業種によって差はあるものの、新興国への進出は必ずしも順調とはいえないのが現状ではないだろうか。高い技術力や独自性を生かす仕組みを、新興国市場で今後どのように構築していけばいいのか。

生産拠点から巨大な販売先へ
変貌を遂げた新興国

 100年に一度の経済危機で世界的に大きく落ち込んだ景気も、いまや回復基調に向かっている。その牽引役となっているのが、中国、インド、南米などのBRICsを中心とした新興市場の成長だ。

新興国の巨大マーケットで日本企業のポテンシャルをどう生かすか

 2010年4月に国際通貨基金(IMF)が発表した「世界経済見通し」によると、2010年から2年間の平均GDP成長率では、日本の1.93%に対して、中国9.97%、インド8.6%、ブラジル4.8%と今後も新興国の大きな成長が見込まれている。

 こうしたなかで、日本企業が成長を続けるためには、急成長を続ける新興国市場を含めたグローバル展開が重要になってきている。しかも、従来のように人件費の安い新興国に生産工場をつくって製品単価を抑えるというモデルではなく、需要の伸びている新興国に、直接自社の製品・サービスを販売するというスタイルが求められる。

 また、それ以外にもさまざまなかたちのグローバル展開が考えられる。

 たとえば、急成長を遂げる新興国の各種製造企業に対して高品質の部品を供給するという方法もあるだろう。または、すでに国内外食産業が始めているように、新興国の現地企業と提携するかたちで海外進出を行うというスタイルも考えられる。

 従来国内だけで完結することが多かったバリューチェーンをグローバルに展開し、供給先を急成長する海外市場にまで広げることで、より大きなビジネスチャンスを獲得できるようになるのだ。

 もちろん、グローバル化に二の足を踏む企業は少なくない。「国内対応で手いっぱい」というところも多いだろう。しかし、国内市場が縮小傾向にあることに加え、経済成長で力を蓄えた新興国の企業が、すでに日本向けに自社製品・サービスの輸出も始めており、競争がさらに激化することは避けられない。グローバル展開は、もはや企業存続に不可欠な条件ともなっているのだ。

 しかし、新興国への進出は一朝一夕に行えるものではない。急速に変化する市場に対して、今まで日本で培った手法を無理やり当てはめようとしても成功はおぼつかない。

 日本オラクル アプリケーション事業統括本部JDE本部ビジネス推進担当の野田由佳氏は、「新興国市場で成功するにはスピードが必要です。市場のニーズを早くつかんで、そのニーズに合致した製品を作り、チャネルに流す、というサイクルをできるだけ早く回さなければいけません」と指摘する。

 その成功例として野田氏が挙げたのが米国の「MARY KAY」という化粧品直接販売会社である。

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