Q.料理のレシピサイトのクックパッドのお家騒動が明るみになりました。多角化戦略で株価を7倍近くに引き上げた穐田誉輝現社長に対して、創業者の佐野陽光取締役が自らを社長にと名乗りを上げましたす。オーナーが外部経営者を招く経営は、日本企業には馴染まないのでしょうか。

投資家も注目する上場企業である以上
すべてが創業者の思い通りになるわけではない

A.日本企業特有の問題というより、クックパッド創業者の個性の問題でしょう。

 業績を拡大させ、株価も上昇させている上場企業のトップを、創業者が半ば自らのエゴで解任しようとするといった事態は聞いたことがありません。

 実際そのようなことになれば、株価下落の引き金となり、少数株主つまり一般の投資家は損失を被るわけです。主張に合理的理由がないと判断された場合、損害賠償の対象にすらなってしまう可能性があります。

 創業者としては、料理から離れた事業の拡大で利益を得るのは良くない、基幹事業である会員事業や、今は赤字でも将来有望な海外事業の拡大を積極的に展開すべきという考えなのでしょう。

 確かに、料理関連にとらわれない事業の拡大は、企業経営を考える上に当然に採りうる選択肢ですし、リスクの大きい海外展開に慎重になることも当然です。

 しかし、これらが創業者の経営思想と異なるからといって、自ら招いた社長と十分な話し合いもせず、突然解任をしようとするのはかなり乱暴にすぎ、上場企業にあるまじき行為だと思います。上場企業は創業者個人の持ち物ではありません。

 それでも解任したいというのであれば、自ら少数株主が所有する株式をすべて買い取り、全株式を取得したうえで非上場化すべきでしょう。

Q.1962年、米ソ冷戦下のキューバ危機では、核戦争が回避できたのは、旧ソ連の諜報員からの情報提供が決め手になったという説があります。その後、機密情報をめぐる国家間の争いは、今日のネット社会でどう変化したとお考えですか。

高度な情報の収集・解析力は
国家も企業も最大の武器なのでしょう

A.私は普通の一民間人なので、スパイと呼ばれるような人物と直接・間接に出会ったことはありません。

 しかし、イスラエルを訪問した際、現地でベンチャーキャピタルやベンチャー企業の関係者とお会いした際、兵役時代に軍の情報機関に勤務されていた方にお会いする機会がありました。

 イスラエルに技術力に優れた企業が多く存在する理由の一つとして、イスラエルでは兵役が義務であり、その際何らかの情報関係の仕事に携わったとします。

 その後、退役したあとにテクノロジー関係の企業に就職して、兵役時代の情報関連の知識と経験を、就職先の民間企業でも活かすことができる。これがイスラエル企業の高いテクノロジーの一つの源泉になっている。

 また、ネット上を流通するさまざまな情報を基にして、諜報機関がターゲットとする人物を決定していたといったといった話を耳にすると、かなり生々しい思いがします。

 ちなみに暗号化されていない情報はビッグデータとして収集・自動分析されていますし、暗号化されている情報であっても、末端の機器が置かれている部屋のハックやヒューマンエンジニアリングで収集されているという話も聞きます。

「情報戦を制するものが戦争を制する」――これは今も昔も変わらないようです。