世界20ヵ国の財務相と中央銀行総裁が上海に集まった。声明が発表されたが、新味ある政策はなかった。確認されたのは、金融政策では不安な世界経済に対処できない、ということだった。

 財政を含めた可能な限りの政策が必要とされた。自国通貨を安くして輸出を増やし、他国に負担を押し付けあう「通貨安競争は避けよう」と戒めがなされた。

消費増税見送りはもはや既定路線、<br />その先は旧態依然の公共事業か増税を見送り、行き着く先は公共事業などの財政出動になってしまうのか(写真はイメージです)

 声明は心構えを謳っただけ。何をするかの合意はない。具体策は各国の宿題になった。

 財務省は頭を抱える。財政出動を求める声が噴き出すことは必至だからだ。首相官邸はほくそ笑んでいるという。「消費税10%見送り」は首相周辺で既定路線になっている。必要なのは、もっともらしい理屈と発信の場だ。動き出したのが国際金融経済分析会合。また首相の私的諮問機関である。

屋上屋の「国際金融経済分析会合」は
消費増税見送りへの露払い役

 2016年度予算案が衆議院を通過した3月1日、安倍首相は国会内で番記者に語った。

「5月の伊勢志摩サミットに向け、国内外の経済専門家を集め世界経済を議論する国際金融経済分析会合を設置する」

 ノーベル賞級の学者を呼んでご意見をいただくという。意味が分からない。

 世界経済を議論する場はG7サミットではないのか。そのための準備は、首相が各国を回り首脳の意見を聞き、方向性を擦り合わせることだ。G7サミットは経済外交の場である。その前に世界から学者を呼んで世界経済を分析する会合を何回か開いて、どうするのか。屋上屋を重ねるとは、このことだ。

「伊勢志摩サミットへの準備」は口実で、本当の狙いは「国内向け」だろう。いかにも役人が考えそうな会合である。

 会議は企画された段階で結論はできている。それが霞が関の流儀である。会議で方向を決めるのではない。結論が先にあって、ふさわしい顔ぶれを選び、会合の器をつくる。識者は道具でしかない。