ギリシャやハンガリーの財政危機に端を発したユーロの暴落が起きている。直近でユーロ安は一服しているものの、欧州金融危機の不安が再燃すれば、いつまた暴落が起きないとも限らない。一方で中国も、人民元の対ドル為替レートの変動幅を弾力化する方針を発表した。サブプライムローン問題が顕在化した2007年後半以降、ただでさえ対ドルベースで円高傾向に苦しんできた日本は、新たに「ユーロ安」「人民元高」がもたらすダブルインパクトに晒されている。未知の為替動乱が企業や我々の生活に及ぼす「思わぬ影響」を、リサーチしてみよう。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

もうドルだけ見てもビジネスはできない!
消えない欧州危機不安で続く「円高ユーロ安」

「これほどの円高ユーロ安になるとは、思わなかった・・・・・・」

 現在、電機、精密機械、自動車といった日本の輸出産業のトップは、皆頭を抱えている。理由は、春先からギリシャやハンガリーの財政危機を発端に本格化した欧州の「金融危機不安」だ。

 巨額の財政赤字で危機に陥ったギリシャを救うため、ユーロ圏16ヵ国は6月2日、3年間で1100億ユーロ(1ユーロ=110円ベースで約12兆1000億円)の協調融資をIMFと共同で行なうと発表した。その直後にハンガリーの粉飾決算問題が明らかになったことや、PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインなど財政不安を抱える5ヵ国)の支援のために、さらに7500億ユーロ(1ユーロ=110円ベースで約82兆5000億円)の融資を決定した。

 これらを受け「欧州危機パニック」に陥った為替市場では、ユーロが売られまくり、「緊急避難先」として円が買われた。その結果、7月頭には一時8年半ぶりとなる「1ユーロ=109円台」の水準まで、円高ユーロ安が進んだのである。

 こうなると、日本の輸出企業はたまったものではない。2007年後半に米国で発生し、世界的な不況の引き鉄となったサブプライムショック以降、信用を失った世界の基軸通貨・ドルは売られ続け、その一部が日本円に流れ込んだ。そのため中期的には、円高ドル安傾向がずっと続いている。