マクドナルドが4月25日から13店舗で展開し、“黒マック”とも呼ばれる「新世代デザイン店舗」が、進化に向けて粛々と動き出している。7月9日から「100円マック」「120円マック」と、「スペシャルランチセット」(通常店舗のMパワーランチセットのものとは別価格)の実験販売を始めているのだ。

 展開は6店舗のみ、期間も8月末までの予定だが、実験に当たっては告知もしており、店頭チラシの配布や携帯配信を行った。

 そもそも「新世代デザイン店舗」とは、マクドナルドが渋谷、赤坂、青山などで実験している、居心地のよさを追求した高級版マクドナルドのこと。2010年度の店舗戦略の両翼として、433店の「戦略的閉店」と共に打ち出した店舗だ。賃料や人件費など、コストの高い都市部店舗における「新たな顧客価値創造と収益性の継続的向上」(原田泳幸・日本マクドナルドホールディングス社長)に向けた取り組みの一環だという。

 客席は15%減らし、ゆったりとした空間を提供。店内は全面禁煙で、内装や店員のユニフォームを一新するなど、随所に工夫を凝らしている。反面、価格は少々高めだ。全商品の3分の2を10~30円、最大で50円値上げ。そして100円マックは当初メニューになかった。

 「100円メニューはない形からスタートしていきたい。しかし、すべての商品がこの外食産業の中で最も“Value for money(納得感、お得感)”のスコアが高いようにするという戦略に変わりはない」。原田社長はこう語っていた。

 その「新世代デザイン店舗」も、開店から約3ヵ月。値上げや「100円マック」の排除で客数減が懸念されたが、女性客や比較的年齢の高い層から支持を集めるなどし、売上高は「計画通り、堅い数字で推移している」(マクドナルド)。

 今回の実験では、次の段階として、「100円マック」などの導入による客数、客層の変化を見る。初めから導入しなかったのは、当店舗のコンセプトが見えにくくなるからだという。また、メニューは減るより増えたほうが、顧客のイメージもよい。

 これら商品の拡大・取り止めの判断は、実験結果を見てからになる。ただし、特に「100円マック」は「単に世の中の低価格志向に対応した商品ではなく、驚きを売るというマクドナルドの戦略商品。販売すれば、当然客数は増える」(マクドナルド)。予想通り客数が伸び続け、売り上げアップにつながれば、導入店舗、期間が拡大されることは十分に考えられる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)