3年間の超小型モビリティ実証試験が終了
成功事例も見つかったが、やはり「軽」には勝てず

 あっという間の3年間だった――。

 2016年3月16日、熊本県庁内の会議室。

熊本県の若者起業支援“ワサモン”は他地域と一味違う熊本県庁前で、熊本県小型電動モビリティ導入促進協議会のメンバーが「MC-β」を囲んで「最後の記念撮影」 Photo by Kenji Momota

 菊陽町、大津町、阿蘇市、水俣市、さらに九州運輸局や熊本県県警本部の関係者ら約30人が参加して、平成「超小型モビリティ実証試験」の「締めの会」が行なわれた。正式名称は「平成27年 第2回小型電動モビリティ導入促進協議会」という。

 本連載では2014年2月、同試験キックオフ式の模様の他、「成功事例」としての訪問介護事業者による利活用など、熊本県の「新たなる地域交通」に関する施策を取り上げてきた。

 筆者は過去6年間にわたり、全国各地で超小型モビリティの実証実験の現場を取材してきたが、そのなかで、都道府県単位での参加は熊本県のみ。そのため、同県の実験内容は多種多様だ。中山間地域、都市部、そして島などの様々な地域で、また個人利用や事業用などの様々な利用シーンで検証を続けてきた。

 その結果として、「訪問介護事業者の移動用」が成功事例になるなど、実用化への可能性が垣間見えたが、全般的には「決め手に欠けた」。県民からは「結局、軽自動車のほうが良い」という声が多かった。

 こうした「熊本での現実」は、今回の協議会の翌週にあたる3月22日、国土交通省が東京国際フォーラムで開催した「超小型モビリティ シンポジウム~超小型モビリティの成果と可能性」でも報告された。

 超小型モビリティは、国が新しい車両規格としての新設を目指してきたもの。平成22年度から第一期の3年間、さらに平成25年度から第二期として3年間の合計6年間、全国各地で実証試験を行ってきた。今回のシンポジウムで、国交省と日本自動車工業会が行なった講演のなかで、6年間の実証試験のうちの3年間の「熊本実証」の重要性が高く評価された。

 だが、現時点で国は、超小型モビリティの量産化に向けた法整備の詳しいロードマップを提示しておらず、ホンダとしても超小型モビリティに関して「次の一歩」が描けないのが実情だ。そうした状況のなか、ホンダと二人三脚で社会実証を進めてきた熊本県は、国が来年度から始める新たなるスキームでの超小型モビリティ社会実証への参加を見送った。