中卒社長が語る「イエスマン量産教育こそ学歴病の温床」「高学歴者は仕事の能力も高い」という声が根強くあるが、それは本当なのか。日本に根付く「イエスマン量産教育」の功罪とは?

 今回は、最終学歴が中学校卒という企業経営者の話を基に、「学歴病」について考えたい。中卒という、学歴社会で大きなハンディを負う可能性のある人たちの声を聞くことで、より広い視野から「学歴」を見つめたい。

 賃貸物件の仲介・管理を手がける株式会社NYホーム(愛媛県松山市)の代表取締役・松岡秀夫氏(53歳)の最終学歴は、中卒。自ら「中卒社長」と名乗っているが、「自慢をしているわけではないし、『中卒が偉い!』とも思っていません」と語る。

「学歴の高い人と低い人が当社の採用試験を受けて、その結果などが同じならば、高いほうの人を採用します。競争社会を勝ち抜いてきたという実績があるのだから、そのことは評価していいことだと考えています。ただし、学歴の高い人が、仕事で高い成果や実績を残すことができるのかと言えば、そうではないと思っています」

 これが、松岡氏の「採用と学歴」に関するポリシーだ。


中卒で担当役員に昇格、
紆余曲折を経て起業した経営者

 まず、松岡氏のプロフィール紹介から始めたい。

 小学校2年生の頃両親が離婚し、父親と2人で生活をする。父は病気のため、働くことができない。やむを得ず、生活保護を受給した。地元の高校に入学したが、生活が苦しく、通学を続けることができない。退学し、職人となる。

 27歳のとき、社員20人ほどの建設会社・中岡組(のちにジョー・コーポレーションに社名変更)に入社する。34歳で分譲マンション事業の担当役員となる。2006年のピーク時にはグループの年商が370億円を超え、社員は約700人になった。

 43歳で常務執行役に就任し、分譲マンションの販売業績を伸ばすが、07年に売上は240億円前後に落ち込む。08年秋のリーマンショック以降、業績は一段と悪化する。08年、45歳で子会社の代表取締役になった。降格人事だったという。09年、親会社のジョー・コーポレーションは民事再生法の適用を申請した。

 同年、47歳で現在の会社・NYホームを創業した。松山市を拠点に、主にアパート・マンションや一戸建て、店舗や事務所、駐車場などについて賃貸の仲介と管理をする。社員は現在17人。本部のほか4店舗を構える。