仕事に対してどう向き合うか?

 竹中平蔵教授が「『親の教科書』といえる稀有な良書」と評し、『「学力」の経済学』著者、中室牧子氏が「どうやって子どもをやる気にさせるのか、その明快な答えがここにある」と絶賛。また、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「リーダーシップ育成の教科書として、目下最良の一冊」と称する『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』

 ベストセラー『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』著者“グローバルエリート”ムーギー・キム氏と、子育て連載でバズ記事連発のミセス・パンプキン氏が、200人を超えるエリート家庭の「最も感謝している教育方針」を調査し、本質的なリーダーシップ育成法を一冊にまとめている。

 発売わずか2ヵ月で13万部を突破し、子育てのみならず、ビジネスやあらゆる分野のリーダーシップを伸ばすビジネス書として、異例のベストセラーとなっている中、本書の内容に基づき、各界のリーダーと「リーダーシップの育て方」を論じる対談編をお送りしている。

 今回は、ムーギー・キム氏が、M&A、バイアウト、事業再生の分野で日本のトップを走る佐山展生氏(スカイマーク株式会社代表取締役会長、インテグラル株式会社代表取締役)を訪ねてお話をうかがった後編。人とはまったく違う独自の道を歩み、ビジネスを大成功させてきた佐山氏は、仕事においてどのような考え方を大事にされているのか?

現場で働く人たちの気持ちに触れた

現場感覚のある「ウェットな働き方」をしよう<br />

ムーギー 佐山さんは私にとって、中学・高校の先輩であるだけでなく、金融業界の大先輩でもあるので、この機会に佐山さんの仕事観とか、投資先企業の人たちとの関わり方、人の育て方などもぜひお聞きしたいのですが、ビジネスをする上で、佐山さんがとくに大事にされていることなどはございますか?

佐山 私もいまは金融の世界で生きてるわけですけど、金融というと、みんなお金が大好きで、儲からないとなったら、簡単に人を切り捨てるみたいなイメージがあると思うんですよ。

ムーギー この業界だとシビアにリストラするというイメージを持たれがちですよね。

佐山 でも、私が思っていることは全然違って、やっぱり現場の雇用は最大限守らなきゃいけない。これを私は本気で考えています。

ムーギー 佐山さんはいろんなところで、そういう発言をされていて、それは帝人に入ったばかりのころの経験が大きいとおっしゃっていますよね。

佐山 そうなんです。私は帝人に入社してすぐのころから、三交代勤務の製造の現場で、3年間みっちり働きました。それも入社後に3ヵ月実習しただけで、すぐに55人の責任者にしてもらい、人事考課から、昇格から、すべてやらなきゃいけない立場になってしまった。

ムーギー それは、責任を任されるのがずいぶん早いですね。

佐山 それはほんとに嫌でしたよ。22歳の若造が人生の先輩の評価もしなきゃいけないし、自分に任されたチームについては責任があるし……。でも、あの時期に現場をたっぷり経験したことはその後のビジネスにおいても、とても大きかったですね。やっぱり、ものづくりの現場で働いている人が何を考えているかとか、どんな暮らしをしているのかとかを知っているって大事ですよ。

ムーギー ですよね。投資先をマネッジされるときも、取締役会に上がってくる紙だけでなく、現場の一人一人の人生を想像できると。

佐山 若い兄ちゃんから年配の人までいろんな人が働いていて、冠婚葬祭は当然ですが、交通事故はあるし、突然いなくなる人だっている。夜中の12時に仕事が終わって、みんなで焼き肉を食べに行ったり、夜勤が朝の8時に終わるんで、それからみんなでゴルフへ行ったり、野球をしたりね。そういう生活を3年間やってたんで、それが私の社会人のベースになっているんですよ。

ムーギー それは、多くの金融投資家と佐山さんが、ずいぶん違うところですね。

佐山 たぶん、全然違うと思います。私が入社してすぐのころに、第2次オイルショックがあったんです。それで帝人にもリストラの波が来て、全員に「いま辞めたら退職金がいくらになります」みたいな提示があったんです。しかし、各部署でノルマがあったのでしょう、辞めさせることを前提に面接されていたようです。いい人がけっこう辞めていくんですよ。かなり大規模な人員削減だったんで。そして、一段落した後、当時の経営者が、人員削減により、これだけ業績がよくなりましたと報告されていました。そのときに「ええかんげんにせぇよ」と私は思いました。

ムーギー それは帝人に対して。

佐山 まあ、そうですよね。当時、私はペーペーでしたけど、経営者っていうのは従業員を食べさせてナンボやろうって、思ったんです。それが私の原点ですし、その思いはいまでも変わらず、ずっとあります。