事業計画書といえば、何十枚にも及ぶ書類を作成しなければいけないと思われがちだが、そんなことはない。起業して資金を調達するための事業計画書はもっと簡素でいいのだ。日本政策金融公庫に26年間勤務し、5000人以上の創業融資に携わってきた上野光夫氏が、起業のための事業計画書のポイントを紹介する。

なぜ人マネはNGなのか

 最近は、日本政策金融公庫や制度融資の事業計画書(創業計画書)について、書籍やインターネットのサイトに記入事例のようなものが掲載されています。

 起業家の中には、それらをそっくりマネして、創業計画書を書こうとする人がいます。また、自分で書こうとせず、専門家と称する人に作成を依頼する人もいます。

 事業計画書を書くノウハウを得るために、書籍やネットから情報を得ることや、詳しい人にアドバイスを受けるのはとても有意義なことです。しかし、書籍やネット情報の事例とそっくりな創業計画書にするのはやめたほうがいいと断言します。ましてや、他人に事業計画書の作成を丸投げするのはもってのほかです。

 事業計画書は、人マネではなく「あなた色」、つまりオリジナリティを出すことが重要なのです。

 人マネの事業計画書がNGである理由は3つあります。

 1つは、融資担当者との面談のときに、「自分の言葉」でうまく説明できない可能性があるからです。事業計画書に書いてあることと、実際のビジネスプランに微妙な相違が生じ、起業家の説明することに整合性がなくなります。

 融資担当者は、「書いてあることと言っていることがなんとなく違う」という印象を受けます。すると、「事業計画が不明確で定まっていない。起業するのは時期尚早ではないか」という判断をしかねないのです。

 2つ目の理由は、起業して事業を軌道に乗せるためには、独自の強みやオリジナリティが必要だからです。融資担当者やその上司が「ありふれた内容のビジネスプランだ」と感じると、商品やサービスについて競争力が弱いと判断し、収支見通しに確信が持てなくなります。