大動脈は心臓に直接つながっている動脈で、胸部から腹部にかけて走っている。全身でいちばん太い血管で、心臓から送り出された血液を全身に届ける幹線道路のようなものだ。

 大動脈疾患には大動脈瘤や大動脈解離などがあるが、いずれも動脈硬化に関連した病気である。

 大動脈瘤とは、大動脈の動脈硬化が進み、血管壁の弱い部分が血流の圧迫を受け、ふくらんでこぶのようになった状態をいう。この時点ではなんの自覚症状もないが、放っておくと、ものが飲み込みにくくなったり、声帯の神経が圧迫されてしゃがれ声になったりすることもある。さらに進展すると、こぶが風船のように破裂し、激烈な痛みを伴う。大動脈だけに破裂すると大量出血になることが多く、ショック状態となって死に至る危険性が高くなる。

大動脈疾患・閉塞性動脈硬化症が起こる部位 大動脈解離は、動脈の内膜、中膜、外膜の三層のうち、内膜に亀裂が生じて、中膜の内部に血液が流れ込む病気。急性のものは胸や背中をバットで殴られたような激しい痛みがあり、ショック状態になるケースも少なくない。

 そのほか、腹部大動脈に続く太腿やふくらはぎなどの部分で動脈硬化が起こる閉塞性動脈硬化症という病気もある。この病気は少し歩いただけで痛みが出て、足を引きずってしまうようになる。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 田原寛 )