国民病のひとつと言われる「痔」。諸説あるが日本人の3人に1人が経験者というのが妥当なセンで、調査によってはそれ以上の数字も出ている。ただでさえ病院通いは面倒で、時間を作れない人も多い上に部位が部位だけに恥ずかしいのか、受診率が50%を切るのも特徴だ。

意外とわかっていない
三大「痔」疾患をおさらい

「痔主」3人に1人なのに半数が治療しない日本おしり事情国民病とも言える「痔」。そのなかでも「いぼ痔」「切れ痔」「痔ろう」が三大疾患だ

 そもそも痔とは肛門部の疾患の総称である。なかでも「いぼ痔」「切れ痔」「痔ろう」が三大疾患ともいえる代表的なもので、痔といえばこの3つを指すと考えてよい。ちなみにいぼ痔は「痔核」、切れ痔は「裂肛」が医学上の正式名称で、字面だけで具合が悪くなりそうだ。

 痔核は直腸や肛門周辺の静脈が鬱血し、いぼ状になった状態で、出血や痛みを伴うことが多い。いきみや、便秘、激しい下痢、重いものを持つなどの肛門への負担により、症状は重くなっていく。長時間座ったままなどの姿勢を取り続けるのも鬱血の原因となりよろしくない。胃腸の調子が悪く、トイレに座っていることが多い人は要注意である。経年による肛門の皮膚や粘膜の支持組織がゆるんでくるのも原因のひとつで、「働き盛りに多い」「中年以降に多い」とされるのはこのタイプ(痔核)である。

 裂肛は肛門のケガである。便秘時などの硬い便が肛門から出る際に、肛門の上皮が裂け、痛んだり出血したりするのだ。便秘や出産のときに強い腹圧をかける悪影響から女性に多いとされるが、男性の患者も少なくない。便秘と同様に下痢も危険だ。下痢の水分の多い便は肛門粘膜に浸透して炎症を起こしやすい。慢性の下痢なら粘膜がダメージを受け続けることになり、切れやすくなってしまうのである。