先週、日米で立て続けに投手の最速記録が出た。

 まず日本。26日に東京ヤクルトの由規が横浜・スレッジの打席で時速161 キロを出した。NPBにおいてこれは、巨人・クルーンが08年にマークした162 キロに次ぐ歴代2位の球速。日本人投手としては伊良部秀輝、山口和男、五十嵐亮太の3人が持っていた158キロを一気に3キロも上まわる最速記録である。

 アメリカでは翌27日、MLBシンシナティ・レッズ傘下の3Aルイビルでプレーするアロンディス・チャプマンが時速105マイル=169キロをマークした。アメリカでのこれまでの最速記録は104マイル=167キロで2キロ更新。人類最速記録が出たことになる。

 この記録はアメリカでは大きな話題になったようだ。レッズは現在、ナショナルリーグ中地区の首位を走っている。この快投でチャップマンはすぐにでもメジャーに昇格すると見られており、レギュラーシーズンの残り試合やプレーオフで、この剛速球が見られると、ファンは楽しみにしているらしい。

 一方、日本の由規の記録は、当日のスポーツニュースや翌日のスポーツ紙には大々的に取り上げられたものの、ファンの反応は今ひとつだった。

 それにはいくつかの理由が考えられる。ひとつは161キロが出た神宮球場のスピードガン計測が「甘い」という説があることだ。

 神宮では大学の試合がよく行われる。今秋のドラフトの目玉である澤村拓一(中大)が157キロをマークしたことがあるのをはじめ、150キロ台を出す大学生投手が結構いるのだ。全日本大学選手権などでは地方大学の140キロ台後半が最速の投手が、神宮に来ると150キロ台を出すという。そんなことから「神宮は4~5キロ速い数字が出る」というのが球界関係者の定説になっている。

 新聞の運動部記者はそうした話を耳にしており、161キロと聞いても諸手を挙げて賞賛できず、眉にツバをつけた感じで記事を書く。そのニュアンスが読者に伝わるのだ。

 また、テレビ中継(スカパー、フジ)も間が抜けていた。記録達成の瞬間を伝えられなかったのだ。筆者は偶然、そのシーンを見ていたのだが、記録を出した投球のテレビ画面の球速表示はなぜか152キロだった。