リーダーはもっと「言葉」にこだわったほうがいい

つねに新しいコンテンツと面白いサービスを生み出すウェブクリエイター集団、面白法人カヤック・柳澤大輔さん(代表取締役CEO)と、1000人以上のトップリーダーを取材してきた藤沢久美さんによる対談。

藤沢さんは、発売3ヵ月で5万部を突破した『最高のリーダーは何もしない』の企画段階から、ビジョン型のリーダーの代表的な人物として、柳澤さんについて語っていたという。

柳澤さんは「面白法人」の経営者として、どのようにビジョンを現場に浸透させているのか。また「経営理念オタク」を自称する柳澤さんは、さまざまな企業の経営理念をどう分析して、自社に反映しているのか。全3回にわたって対談の模様をお届けする。(聞き手/藤田悠 構成/前田浩弥 撮影/宇佐見利明)

「つくる人を増やす」。
それが面白法人カヤックの存在理由

リーダーはもっと「言葉」にこだわったほうがいい柳澤大輔(やなさわ・だいすけ) 面白法人カヤック代表取締役CEO
1974年香港生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。
1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。鎌倉に本社を構え、鎌倉からオリジナリティのあるコンテンツをWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム市場に発信する。ユニークな人事制度(サイコロ給、スマイル給)や、ワークスタイル(旅する支社)を発信し、「面白法人」というキャッチコピーの名のもと新しい会社のスタイルに挑戦中。2015年株式会社TOWの社外取締役、2016年クックパッド株式会社の社外取締役に就任。
著書に『面白法人カヤック会社案内』(プレジデント社)、『アイデアは考えるな』(日経BP社)などがある。

【編集担当 藤田】藤沢久美さんの最新刊『最高のリーダーは何もしない』では、リーダーが描くビジョンの大切さを述べています。柳澤さんは企業のリーダーとして、また、さまざまな企業の経営理念をウォッチしている「経営理念オタク」として、藤沢さんのリーダー論をどう受け止められたのでしょうか?「リーダーシップ」「ビジョン」を切り口として、柳澤さんがどのようにして「面白法人」をここまで体現してきたかをお話しいただきたいと思います。

【藤沢久美(以下、藤沢)】確かに、カヤックさんのサイトを拝見していると、なんか日に日に面白度がアップしていますよね。会社のサイトじゃないみたいです。ニュースサイトというか、ゲームサイトというか。

【柳澤大輔(以下、柳澤)】会社自体がもう、コンテンツ化してますからね。

【藤沢】その「面白法人」は、どのような理念で成り立っているのでしょうか?

【柳澤】ぼくらは、「一番大切にしていること」を「経営理念」という言葉で表現しています。「つくる人を増やす」というのがその経営理念です。つくる人が増えれば、面白い社会になるだろうと。ぼくらは経営理念を「会社の存在理由」と考えています。

【藤沢】経営理念を「会社の生きる目的」ととらえているんですね。

【柳澤】はい。ただ「存在理由」と言っても難しいじゃないですか。個人にしても存在理由なんて若いころは誰もわからなくて、だいぶ年をとらないとわからない。会社も一緒で、創業時に経営理念を一生懸命つくるんだけど、まだ自分たちの得意なことをわかっていないから、全然しっくりこないものになるんですよ。だからぼくらも、経営理念そのものは創業からだいぶ経ってから、何度もバージョンアップして、やっとしっくりくるものになったんですけど。

【藤沢】なるほど。

リーダーはもっと「言葉」にこだわったほうがいい

【柳澤】でも、創業から一切変わっていない言葉があって、それが「面白法人」なんです。たまたまいいチョイスをしたのかもしれません。だから「面白法人」という言葉をそのまま経営理念にしてもよかったんだけど、経営理念は「経営」という言葉が入っているぶん、もうちょっと具体的な方法論が入っていないと、単なるキャッチコピーで終わってしまう。それで「つくる人を増やす」という言葉に至りました。

【藤沢】「面白法人」を具体的にどう実現するかを表したものが「つくる人を増やす」なんですね。

【柳澤】そうですね。でも、カヤックのベースはやはり「面白法人」という最初の直感の言葉から生まれてきていているんです。面白く働く人、面白がる人を世の中に増やそうとか、自分たちが面白がろうとか、そのような意味を込めて「面白法人」という言葉をつけました。