AIがボットの進化を支える

 テクノロジー業界の「ネクスト・ビッグシング(次の大潮流)」は「ボット」だと言われる。

 ボットとは「ロボット」の略称。といっても、形のある物理的なロボットではなく、オンラインでユーザーとのやりとりを「自動化」するしくみである。ブラウザーやチャットの中に組み込まれ、たいていはユーザーと自然言語でやりとりできる人工知能が後ろに控えている。

 これまでも企業のサイト上でカスタマーサービスを行うボットはあったが、その性能はひどいものだった。また従来型は顧客とのやりとりがあらかじめいくつか想定されているものが多かった。ある程度のレベルまでは有用だったが、内容が複雑になったり変化球的になったりすると、つまらない回答を繰り返したりして、役に立たないことがほとんどだった。

 これに比べて、新しいボットはAI技術の進歩によって機能的にも向上し、まるで人格を持つかのような性格付けもされている。また、音声による入力も可能になっている。ボットが本当にボットらしくなってきたのだ。

 たとえばチャットアプリの中で機能するボットは次のように使われる。

 企業が、顧客にボットによるサービスを提供したい場合、チャットアプリのプラットフォームを利用して、自社のサービスを構築する。ユーザーは、そのチャットアプリを開いて各社のボットを呼び出し、そこでショッピングをしたり、最新のニュースを見たり、映画の主人公とやりとりしたりする。

代表例は「フェイスブック・
メッセンジャー」内のボット

 そうしたボットのためのプラットフォームを提供しているアプリで、よく知られているのは、「フェイスブック・メッセンジャー」だ。チャットアプリの中で機能するボットは「チャット・ボット」とも呼ばれ、フェイスブック・メッセンジャーでは、すでに花をプレゼントする「1-800-Flowers」やCNN、ショッピングサイト、天気予想サイトなどがチャット・ボットを提供している。

 他のチャットアプリでは、たとえばパラマウント・ピクチャーズがキックメッセンジャー(Kik)で「忍者タートルズ」をボット化したり、同じくキックで人材派遣会社が面接をボット化したりしている例もある。

 今後、銀行の振り込み、航空券の問い合わせ、レストランの予約、出前の注文など、現在われわれがアプリやブラウザーでやっているかなりのことが、ボット化される可能性もある。