戦後の住宅不足を解消するために急ごしらえの住宅が大量供給された日本。当時の住宅は20年くらいしか持たなかったといわれている。住宅政策が「量より質」に転換されたのは1970年代のこと。以降、「強くて快適な家」を造るための施策が継続的に打ち出されハウスメーカーなど供給サイドの開発努力も加わって日本の住宅は飛躍的に進化、長寿命化も実現してきた。「あらゆる技術を駆使して今ようやく100年住宅が完成したところ」こう指摘する住宅評論家の櫻井幸雄氏に、最新住宅の特長と傾向を聞いた。

住宅は、暮らしながら
反省を踏まえて進化する

櫻井 幸雄 (さくらい・ゆきお)
住宅評論家

毎年、200件以上のマンションや戸建てを探訪。実際に歩いて得た情報を基に、親しみやすい論評活動を展開している。『不動産の法則 誰も言わなかった買い方、売り方の極意』 『資産価値を高めるマンション管理の鉄板事例48 マンション暮らしは「管理」でここまで変わる!』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

 湿度が高く、台風や地震も多い──。日本には住宅にとって厳しい条件がそろっている。

「しかし住宅には、暮らしながら反省を踏まえて進化する側面がある。また、科学の進歩を反映しやすい商品でもある」と指摘するのは住宅評論家の櫻井幸雄氏。だから日本では、湿気や台風や地震を乗り越える技術が次々に開発され、それらを駆使して、今ようやく100年住宅が完成したところだ、とも語る。

 櫻井氏の言う100年住宅とは単に頑丈で長持ちする家ではない。それなら開口部を極力減らして要塞のような建物にすればいい。長く住むには優れた居住性が不可欠で、その両方を兼ね備えた住宅を指す。

 例えば、耐用年数が100年超といわれる「長期優良住宅」は、耐震性、省エネ性、バリアフリー性、維持管理・更新の容易性などの要件で厳しい基準が設けられている。

 地震や台風に耐える強靭な構造躯体であることはもちろん、高断熱・高気密でエネルギー消費を抑えながら一年中快適に過ごせる家、バリアフリーで安全な家、設備が劣化したら容易に更新できる家などの条件を全て満たした家なのだ。まさに日本の最新住宅の姿だろう。

「こうした住宅の長寿命化・高品質化を背景に、最新の住宅にはさらにプラスαの工夫が施されています」(櫻井氏。以下同じ)

 どんな工夫なのだろう。