原油相場は上昇基調を維持している。米国産原油の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、5月下旬に1バレル当たり50ドル台に達した。2月11日に付けた26.05ドルの底値に比べると、9割以上もの上昇になる。

 5月は、カナダで森林火災が発生し、オイルサンドの生産が落ち込んだことや、ナイジェリアで石油施設が武装勢力の攻撃を受け、供給障害が広がったことが原油相場の押し上げ材料となった。

 2014年以降の石油価格下落を受けて、世界最大の石油消費国である米国のガソリン需要が好調に推移している。中国やインドでも自動車の普及がガソリン消費を押し上げている。数カ月前に想定されていたよりも、原油需給は引き締まる方向にある。

 6月2日には、オーストリアのウィーンでOPEC(石油輸出国機構)定例総会が開催され、大方の予想通り、生産目標の再設定や増産凍結での合意は見送られた。

 サウジアラビアとイランの政治的な対立の深刻化などを背景に、総会における合意は難しいとの見方が多かっただけに、合意失敗が明らかになった後も原油相場への負の影響は限定的であった。

 むしろ、総会での加盟国間の対立は予想されたほど激しいものにならず、事務局長の人選で合意するなど、OPECの結束がやや回復したとの見方も出ていた。