マンション建設に特化した建設会社、長谷工コーポレーションが既築マンションの管理業務や修繕工事などのストック事業の強化に舵を切り始めた。将来の世帯数減少による新築の需要減やストック市場の拡大に対応するものである。その戦略の可能性を追った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)

 JR浦和駅東口からまっすぐに延びる道路を歩いて9分、長谷工コーポレーションにとって“こだわり”のマンションが建設中だ。それは「ブランシエラ浦和」。日本初の長期優良住宅認定マンションである。

 長期優良住宅とは、耐震性や耐久性、維持管理のしやすさなどが優れ、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律(長期優良住宅普及促進法)」で国土交通省に認定された住宅のことだ。

 周知のとおり、長谷工はマンション建設に特化した建設会社。その長谷工がこのようなマンションを建設するのは、自らの技術力を誇示するという「モデルルーム」的な意味合いがある。同時に「今後は『きちんと手入れして長く大切に使う』というストック型社会に対応したビジネスを強化する」(大栗育夫社長)という“決意表明”の象徴でもある。

 ストックビジネスの強化──。

 今年4月に社長に就任した大栗氏が社内に向かって繰り返し強調する言葉である。

 ここでいう「ストックビジネス」とは何か。それはマンションの新築・販売をフローのビジネスとするならば、既築のマンションを軸に管理業務やリフォームなどから、継続的に収益を上げていくビジネスのことである。

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 上の年表を見てほしい。長谷工は近年、ストック事業に一貫して力を入れている。2008年から09年にかけて分譲マンションの管理業務を行う管理会社2社を買収したほか、1社の管理事業を譲り受けている。

 09年にはマンションの共用部や外壁などの定期的な大規模工事(大規模修繕工事)の専門会社、長谷工リフォームを設立した。今年4月からは会社分割でマンション管理会社である長谷工コミュニティのリフォーム事業を長谷工リフォームへ移管、長谷工コーポレーションからも技術者約30人を移籍させ、190人の人員で本格的に活動を開始している。