「週末、あんなにダラダラ休んだのに、月曜の朝からなんとなくダルい、頭が重い…」――そんな人は、身体ではなく、脳が疲労しています。
たいていの人は、「休息=身体を休めること」だと思い込んでいます。たっぷり睡眠をとったり、リゾート地でゆったり過ごしたり、温泉にじっくりつかったり……もちろん、そうやって身体を休めることも大切です。
しかし、それだけでは回復しない疲労があります。それが「脳の疲れ」です。そう、脳には脳の休め方があるのです。「科学的な脳の休め方」をまとめた最新刊『世界のエリートがやっている 最高の休息法 ― 脳科学×瞑想で集中力が高まる』より、「脳疲労」がたまるメカニズムをご紹介します。

「何もしない」でも<br />「脳疲労」は消えずに残るどれだけ休んでも疲れが取れない人は、「疲労」を誤解しているのかも…

「科学的に脳を癒す方法」が
アメリカでも模索されている…

脳疲労は肉体疲労とは根本的に異なりますから、どれだけ身体を休めても、知らないあいだにどんどん蓄積されていきます。

そして、それが積もり積もって慢性化すると、人生のあらゆるパフォーマンスが低下し、ひどいときにはいわゆる心の病へと至ります。

「何もしない」でも<br />「脳疲労」は消えずに残る久賀谷 亮
Akira Kugaya, PhD/MD
医師(日・米医師免許)/医学博士
イェール大学医学部精神神経科卒業。アメリカ神経精神医学会認定医。アメリカ精神医学会会員。
日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。そのほか、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバーUCLA非常勤医など。
2010年、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」を開業。同院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。
脳科学や薬物療法の研究分野では、2年連続で「Lustman Award」(イェール大学精神医学関連の学術賞)、「NARSAD Young Investigator Grant」(神経生物学の優秀若手研究者向け賞)を受賞。主著・共著合わせて50以上の論文があるほか、学会発表も多数。趣味はトライアスロン。

私は米ロサンゼルスのサウスベイにあるメンタルクリニック「トランスホープ・メディカル」で院長をしています。ロサンゼルス郡で開業している日本人の精神科医は、じつは私しかいません。クリニックをはじめてからおよそ6年、私はこの地区に住む人々の心の問題に向き合ってきました。

いま、ここアメリカの精神医療は大きく変わりつつあります。

たとえば、薬物治療。日本ではまだかなり一般的ですが、こちらの国では避けられる傾向にあります。その背景にあるのは、脳を「1つの臓器」として扱い、これをダイレクトに治療しようとする脳科学アプローチの発展です。先端脳科学の成果をもとに、TMS磁気治療などの技術革新が進み、副作用のある薬に頼らなくても、心の不調を改善できるめどが立ってきました。

また、カウンセリングの分野でも、瞑想などを含んだ第3世代認知行動療法といった最新トレンドが生まれています。瞑想と言っても、これはただのリラクゼーションとは根本的に違います。この領域にも脳科学が入り込み、瞑想が脳によい変化をもたらすことが実証的に確認されているからです。

米イェール大学医学部の精神神経学科で先端脳科学を研究してきた私は、自分のクリニックでもTMS磁気治療と瞑想ベースの治療を取り入れています。

私が今回『世界のエリートがやっている 最高の休息法』で日本のみなさんにお伝えしたかったのは、このうち後者です。

TMS磁気治療も大変有望で、これから日本で普及していくと思われますが、まだその途上にあります。一方、瞑想について言えば、手軽でありながら、かなりの有効性が期待できることが最新の研究動向からもわかっています。