アサヒビール社長 泉谷直木<br />市場ポジション重視の買収<br />オーストラリアで寡占構築Photo byToshio Fukumoto

──2015年12月期までに海外売上高を今期予想の4倍の4000億円以上にする計画がある。どのような方針で臨むのか。

 メリハリをつける。中国事業は来期には黒字転換が見えてきた。中国市場は日本の7倍の巨大市場だが、生ビールが製造できる工場は日本より格段に少ない。品質競争へ移行しつつあるので、品質で勝る当社は手応えを感じている。

──韓国事業は撤退方針だ。

 M&Aでは従来は「のれん代を引いたら、赤字でも仕方ない」といった考えもあった。しかし国際会計基準(IFRS)導入でそういう悠長な経営は不可能になった。買収先の小さな赤字が本体の決算に大きく響くようになるからだ。

──昨年にオーストラリアの清涼飲料2位メーカーを買収したのに続き、8月に同3位メーカーを買収した。どのような戦略を描いているのか。

 個別企業の経営という視点よりも、オーストラリア市場でどのような市場ポジションを築けるかを重視した。同国の清涼飲料市場は年率約5%で成長する有望市場だが、首位のコカ・コーラ(約45%)とアサヒ系(約30%)で約75%のシェアを占めることができる。3位以下には大差がつくし、同国は流通も寡占状態なので安定した収益を確保できるようになる。