球団買収でブランドアップ<br />住生活グループの乾坤一擲球団買収でリクシル浸透図る(写真は昨年、新日軽買収発表時。右から2人目が潮田会長)
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 住設機器最大手の住生活グループがプロ野球横浜ベイスターズの買収に向け今月内にも基本合意に達する見通しだ。準備室を設置し、球団の資産査定やTBSグループとの交渉を急ピッチで進めている。

 買収の目的は「グループとしてのブランド力の向上」に尽きる。

 トステムとINAXを主体とし、「住」に絡む業種のM&Aを繰り返してきた同社。4月、サッシの新日軽とキッチン大手のサンウエーブを矢継ぎ早に傘下に収め、業界の“台風の目”となっている。海外事業でも衛生陶器の世界大手アメリカンスタンダードのアジア部門を買収し、総売上高は1兆円規模にまで拡大した。

 しかし「グループのシナジーや統一した考えを内外に知らしめるのはこれから」(潮田洋一郎・住生活会長)というように、1月に打ち出したグループブランドLIXIL(リクシル)はほとんど認知されていないのが現状だ。

 国内需要が今後、新築からリフォームへシフトするなか、商品を直接選ぶエンドユーザーへ幅広い商材を持つブランドであるとアピールすることは欠かせない。住生活はLIXIL浸透に500億円近くかかると踏んでいたが、球団保有によってそのスピードを1~2年に縮められるという。買収額は100億円を下回る見通しだ。

 住生活と対照的なのが業界のもう一方の雄、衛生陶器最大手のTOTOである。独立独歩路線を掲げ、国内リフォーム事業で提携する建材の大建工業、サッシのYKK APとは大型ショールームやフェアを共同運営するのにとどまっている。ライバルの激しい動きを受けても、3社の資本提携や持ち株会社化を否定する姿勢は崩さない。

 今回の買収劇は両者の戦略の違いをより鮮明にした。どちらに軍配が上がるかは未知数だが、住生活はブランドの横軸を通すことで新たなステージに突入しようとしている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

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