グローバルビジネスにおける英語能力を測るテストとして定着した「TOEICテスト」。今年5月の公開テストより10年ぶりに出題形式を変更、さらに8月からテストの名称を変更し、英語4技能を測るテストとしての認知拡大を図る。

常務理事
山下雄士

 時代とともに英語によるコミュニケーション方法は日々変化している。その変化に対応するため「TOEICテスト」の内容は、定期的な見直しが行われている。今年5月の公開テストから、10年ぶりに出題形式を一部変更、より時代に即した内容に進化した。

 日本でTOEIC Programを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)の山下雄士常務理事は、今回の変更のポイントについてこう説明する。「テキストメッセージやチャットなど、近年増えているコミュニケーションの方法を出題形式として加えたほか、視覚素材など複数の情報と会話をひも付けて解答する設問などを追加し、より時代に即したオーセンティック(実際的)な内容になっています」

 例えば、リスニングセクションでは3人以上の会話を加え、より自然な会話形式が反映されている。図表などの視覚素材も加えたのは、ビジネスシーンにおいて図表などの資料を見ながら会議や会話をする場面を想定してのこと。

 また、さまざまな意味に取れる一つの文章やフレーズを、全体の文脈を理解した上で解答させる問題も出題される。

 「一言で言えば、リスニングもリーディングも、全体的な内容や流れを理解していないと答えにくい問題が増えています」(山下常務理事)

 ちなみに、出題形式の一部は変更されたが、クオリティと難易度は変わりはなく、TOEICスコアの意味は出題形式の変更前と同等であることが検証されており、スコアの比較も可能である。

2300人以上の専門家が
テストを開発

 2015年度、TOEIC Programの総受験者数は過去最高の277万9000人を数えた。企業・団体・学校などの採用団体数は3600以上で、グローバル人材育成における英語力の指標として、その活用は順調に拡大している。なぜTOEIC Programはそれほど評価されるのか。山下常務理事は、テスト自体の品質の高さによるものだと説明する。

 「TOEICテストを開発・制作しているのは、米国にある非営利テスト開発機関であるETS(Educational Testing Service)。現在3300人以上の職員を擁し、2300人以上が教育学、心理学、統計学、社会学、人文科学、コンピュータサイエンスなど専門性を持つスタッフです。こうした人材の広範な知識を最大限に活用して、品質への妥協のないこだわりを持ってテストを設計している。それがTOEICテストの強みであり、優位性なのです」

 ETSは開発プロセスの中で、実力が同じならば何回受けても点数に違いの出ない“信頼性”に加え、スキルを測定する上で出題の形式と内容が“妥当”であること、さらに特定の国や地域特有の表現や文化的背景に左右されない“公平性”を重視しており、こうした姿勢も、英語能力測定のグローバルスタンダードとして評価される理由になっている。