検察審査会が、小沢一郎元民主党代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る政治資金規正法違反を不起訴処分とした検察の判断を「追及不足」として、「起訴相当」と議決した。今回は、これを約100年間に渡る「政党政治vs検察」の戦いの流れの中に位置づけてみたい。

「政治的検察」が動いた
典型的事例としての小沢問題

 約100年前、平沼赳夫衆院議員の祖父で検察官僚の平沼騏一郎が、汚職事件に関連する政治家を罪に問うかを交渉材料として、政治に対して影響力を行使しようとしたことから「政治的検察」が誕生した。その後、検察は歴史的に権力の座にある(座を狙う)政治家をターゲットにした駆け引きを繰り返して政治的影響力を高めてきた。中には、まったくのでっち上げや形式犯でしかないものを起訴することで、多くの政治家の政治生命を奪ったこともあった(第21回を参照のこと)。

「政治的検察」は、日本の刑事司法が裁判所での審理中心でなく、検察の捜査中心で判断が完結するシステムである上に、「起訴=ほぼ有罪」が日本社会の共通認識であることで成り立ってきた。

 政治家が一旦起訴されると、仮に裁判で無罪になっても計り知れないダメージを受けた。それ以前に、検察はたとえ起訴できない事件でも、その理由を詳細に公開する必要がない。だから検察は「有罪」の確証がなくても簡単に捜査に着手することができ、政治家に社会的制裁を加えることができた。

 小沢氏の問題は、この「政治的検察」が動いた典型的な事例といえる。小沢氏の3人の元秘書の「政治資金規正法違反」は、「小沢氏からの借入金4億円を収支報告書に記載しなかった事実」のみであり、水谷建設から渡ったとされる5000万円の裏献金の事実は起訴事実に含まれなかった。

 これには法曹関係者などから、政治資金収支報告書の訂正ですまされるもので起訴に値しないとの指摘があった。また、秘書からは小沢氏の積極的な指示・関与を裏付ける証拠を得られず、小沢氏は不起訴となった。