グループ統合の試金石になる<br />岩田屋と福岡三越の一体運営10月1日に統合した岩田屋(右)と福岡三越。両店とも天神中心部にあり100メートルしか離れていない

 10月1日、九州有数の繁華街、福岡市天神地区にある百貨店の岩田屋と福岡三越が統合し、「岩田屋三越」として再スタートを切った。

 岩田屋は、地元の名門百貨店だが、経営不振から2005年に伊勢丹の子会社となった。その後、08年に伊勢丹と三越が統合したことで、岩田屋と福岡三越は目と鼻の先に店舗を構えるライバルから一転して同じグループになった。そこで、2店を一体運営し経営の効率化を目指すことになったのだ。

 売上高は1300億円と地方百貨店としては最大級、三越伊勢丹グループ内でも首都圏に次ぐ存在となる。

 統合で見込まれる最大の効果は、後方部門のスリム化だ。同じ天神に店を構える博多大丸は、徹底した経費コントロールで09年度は営業利益29億円を出した。対して、岩田屋と福岡三越は共にこの2年間、利益が出ていない。

 事務所や配送センター、トラック便などを集約することで最低でも10億円の経費削減を見込む。また、システムやカード、労働条件や人事といった営業基盤の統一化も進めた。

 岩田屋は6月の売上高が前年同月を上回るなど回復基調にあり、「統合効果が加われば、今期の収益はかなり改善する」(太田垣立郎・岩田屋三越社長)見通しだ。

 課題は福岡三越である。1997年に進出して13年間のうちに営業利益が黒字化したのは01~03年度の3期のみ。足元の売上高も7月は前年同月比9.8%減、8月は7.9%減と回復が鈍い。地元の商業関係者のあいだでは、建物構造上のデメリットを指摘する声が多い。

 西鉄福岡(天神)駅に直結するターミナル百貨店なのだが、建物の2階に鉄道駅、3階に高速バスターミナルが入っており、1階と実質4階の婦人服売り場との回遊性が悪い。

「売上高が落ちて営業費(販売促進費)を削るという悪循環に陥り、ターミナルの利点を失ってしまっていた。岩田屋との補完関係を強めて収益改善を目指す」(太田垣社長)という。

 営業面での統合効果は、顧客に提供できるサービスの幅が広がることだ。両店の取扱商品やブランド、催事企画を紹介できるようになった。

 婦人服でいえば、岩田屋はファッション感度が高く、福岡三越はコンサバティブ色が強い。両店の商品を併載した小冊子を配布したところ、岩田屋の顧客が福岡三越で買い回るようになり、10月1日以降は福岡三越5~6階の婦人服売上高が前年同期比10%増で推移するなど効果が出始めている。

 来年4月には、伊勢丹と三越の統合が控えている。福岡のケースは、グループ全体の統合の試金石となるだけに、早期の黒字化は最重要課題となっている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

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