中南米
2016年12月7日 風間真治

ドミニカではメジャーリーグ候補選手が「投資」対象
選手を「大切な商品」と考える育成アカデミー

アカデミーは事業であり、投資である

 国民性もあるかもしれませんが、そもそもドミニカ共和国のプライベートアカデミーは純然たる「事業」です。プライベートアカデミーにはそれらを運営するオーナー経営者がおり、彼らが毎月の諸所の運営費用を負担するのが通例です。その費用が具体的にどのような内訳になるかというと、以下のようにまとめられます。

1) 地方の有望選手を獲得した場合に、自分の地域のアカデミーに連れてきて住まわせるための毎月の住居費用
2) 上記住居費用のガス代と電気代
3) 彼らを食べさせるための毎月の食費
4) 住み込みで彼らに料理を作ってもらう家政婦さんへの給料
5) 食料などを買い出しに行ったり選手を移動させる場合に利用する車の毎月のガソリン代
6) 地方から来ている選手は毎月1回程度田舎に帰郷させるための交通費
7) トレーニングをさせるために毎月払うジム費用
8) 筋力強化のために毎日摂取させるプロテイン費用
9) 毎月払う球場の賃貸料金
10) 毎月払うコーチへの給料
11) ボール代とバット代(特にボールは消耗品なので毎月数十個ほど購入必要)

 これに初期費用として、選手のために最初に揃えるスパイク代金が加算されます。

 プライベートアカデミーの選手は14~15歳前後の子どもを中心に、地方の様々なエリアからスカウトされ、そこから平均で2、3年ほど育成されます。つまりこの期間は毎月上記の経費がかかってくるということ。これは、かなりコストがかかる事業です。

 ドミニカのプライベートアカデミーは有望な選手に対する「投資」として行なわれており、この事業が収益として実を結ぶには、選手が順調に成長し、何年か後にメジャーリーグの傘下であるアカデミーと契約できなければなりません。契約金のうちの何パーセントかを手数料としてアカデミーのオーナーが受け取るように、予め選手と契約をかわしておくのです。

 契約が成立して初めて、オーナーの元に手数料としてまとまった金額が支払われるのですが、契約金は以前よりは上昇しているとはいえ、2016年現在で平均4万ドル(約450万円)ほど。いくらドミニカといえども、これではまったく収益にはなりません。そのため、オーナーとしては所属の選手に対しては、2、3年後を目指してできる限りの指導をし、1人でも多くの選手をメジャーリーグ傘下のアカデミーに入れていかないと、経営が成り立たないというのが現状です。

 それでも、早実の清宮君などのように、将来を有望視された選手の場合は、数十万ドル(数千万円)、場合によっては100万ドル(約1億円)もの契約金がつく選手も年間で何人か出てくるのもまた事実です。メジャーリーグの契約ではなく、あくまで「メジャーリーグ傘下のアカデミー」、つまり2Aや3Aよりも更に下部の下部組織の契約にもかかわらずです。これが、ドミニカ共和国が野球大国といわれる所以ではないでしょうか。

日本ハムファイターズに在籍していたエリック・アルモンテが経営するアルモンテ・アカデミー【撮影/風間真治】
指導力が高いことで知られ、近隣の父母たちにも大人気。子どものプレイを見守るコーチと家族【撮影/風間真治】