中南米
2016年12月7日 風間真治

ドミニカではメジャーリーグ候補選手が「投資」対象
選手を「大切な商品」と考える育成アカデミー

選手は「大切な商品」という意識

 私の話になりますが、私も日本で8歳の時から少年野球を始め、その後は中学でシニア、高校では高校野球を経験しました。日本の場合、少なくとも私が野球を経験していた当時というのはまだまだ管理野球の意味合いが強く、時代が時代とはいえ上下関係は厳しいですし、選手を殴るなどは当たり前に行なわれていました。

 今思うと軍隊式の延長という感じがする場面も多々見てきました。当然理不尽なことも多く、力のある選手が嫌気をさして野球という世界から去っていくといった場面も何度も目にしたものです。

 一方、ドミニカ共和国の場合はどうか。私の経験から判断すると、日本の野球の指導とドミニカ共和国におけるプライベートアカデミーにおける指導はかなり異なるというのが実感です。

 ドミニカ共和国のプライベートアカデミーにも必ず数人のコーチがいますが、スパルタ式の指導があったり、怒鳴って選手を萎縮させたり、選手に手を出したりするようなことはまずありえません。どちらかというと、長所をほめて伸び伸びとプレーをさせる傾向にあります。

 コーチたちは裕福とは言えない比較的貧困層出身のドミニカ人が多く、少ない給料で雇われています。ただし仮に所属の選手がメジャーリーグ傘下のアカデミーと契約できれば、コーチにもその契約金から手数料として何パーセントかが特別報酬として支払われます。

 つまり、コーチもまた、選手の数年後を考えて、しっかりと成長してもらい、契約をしてもらうことが大切になります。彼らにとっても選手は「大切な商品」という意識が強く、選手に対しての感覚は日本とは大きく異なるのです。

 数年前に日本のテレビで「スポーツ界における体罰の是非」をテーマに議論する番組を見たことがあります。元巨人の桑田氏などが猛反対する中で、同席していた何人かの元プロアスリートの多くが賛成派だったのには正直な話、衝撃を受けました。というか「ここまで日本のスポーツ指導というのは遅れているのか」と痛感させられたものです。

 ドミニカ共和国の例を見ていると、体罰や暴力、声を荒げながら指導をして、時に選手のモチベーションを大きく狂わせてしまうやり方が、「合理的」ではないことがよくわかります。そのようなやり方をしてしまえば当然、選手たちはすぐにやる気をなくしてしまい、逃げ出したりしてしまうからです。

 ドミニカのコーチ陣はその指導に自分と家族の生活がかかっていますので、「非合理」的なことをする余裕がないのです。コーチが生活に困ってなかったとしてもアカデミーを運営するオーナーはその毎月の運営に多くの費用がかかるわけですから、選手のモチベーションを下げさせるような「非合理」な指導をするコーチがいればすぐにクビにするでしょう。生活や人生、アカデミーの運営がかかっている彼らが、そうしたやり方は一切しないことからも、本来の選手指導で大切なことは何かがわかるのではないでしょうか。

(文・撮影/風間真治)

著者紹介:風間真治(かざま・しんじ)
商社の海外営業、中南米のドミニカ共和国駐在を経て独立。現在はカリブ海に浮かぶドミニカ共和国に住みながら、主に中南米諸国でこれから経済が成長していくような国々を頻繁に回り、未知なる客先を訪ね歩いては様々な新規事業の開拓に取り組む日々。中南米ではいくつかの国に会社を作り、貿易事業、港湾の通関業、不動産事業、インターネット事業、中古車販売業などを手がける。