フィリピン
2017年1月17日 志賀和民

フィリピンの特別居住退職者ビザ最新情報

ビザ取得手続の簡素化は期待できるが、 預託金への相続税課税はより面倒になっている

元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する、フィリピン在住20年の志賀さんのフィリピンレポート。2万ドルの預託金で無限にフィリピンに住める退職者ビザだが、その預託金の相続税に関する手続きはいまだゆれている。

 すでに何度か書いたが、SRRV(特別居住退職者ビザ)保有者が亡くなった際に返金される、ビザ取得時に必要となる預託金(35歳以上なら2万ドル)に相続税が課せられるという問題が、あいかわらず混乱している。

 最近も以下のような事例があったので、あらためて現状を報告しておきたい。

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心臓麻痺で急死したAさんのケース

 昨年、退職者のAさんがSRRVの取得が完了した直後、フィリピン人妻の家で急死するという出来事があった。原因は心臓麻痺で、その日の朝、妻のお姉さんから電話がかかってきた。

「夕べは元気にお祝いをしていたのに、今朝起きてみたら死んでいた。どうしたらよいのか」とパニックに陥っていたので、「まずは 医者を呼んで、何をすべきか指示してもらってください。葬式の手配と死亡証明を入手したら、私に連絡してください。 PRA(フィリピン退職庁)から預託金を受け取るお手伝いをします」と返答した。やがて医師から、検死などやるべきことは承知しているとの電話があった。

 それからしばらくしてフィリピン人妻から連絡があり、葬式などつつがなく終わり、日本大使館への死亡届出も出したとのことだった。

 そうなるといよいよ相続手続きだ。Aさんの預託金は政府系金融機関DBP(フィリピン開発銀行)のPRA口座に預けられている。一般の認定銀行の本人名義の口座とは勝手が違い、私もやったことがないので、かなり前から「DBPの場合、どういう手続きをすればいいのか」とPRAに問い合わせていたが明快な返事はなかった。PRAも経験がなくて、はっきりしたことはわからなかったらしい。

 PRAによると、ビザの取消に必要な書類は下記のようになっている。

1.特別居住退職者ビザをキャンセルするための申請レター
2.Affidavit of Quitclaim(免責供述書)
3.インタビューフォーム
4.委任状(手続きを代行してもらう場合)
5.パスポートとIDの原本

 さらに退職者が死亡している場合は、下記が必要となる。

1.死亡証明。日本で亡くなった場合は戸籍謄本の翻訳ないし日本大使館発行の死亡証明。いずれも外務省とフィリピン大使館の認証が必要。
2.申請者と退職者の関係を示す書類(申請は家族が行ない、その関係を証明する翻訳認証した戸籍謄本ないし婚姻証明/出生証明など)。
3.遺産分割協議書(Extrajudicial Settlement ないしSelf Adjudication。日本で署名した場合は、公証役場で公証して法務局、外務省、さらにフィリピン大使館の認証が必要。

 Aさんの場合、フィリピン人妻が申請者となり、死亡証明と婚姻証明はフィリピン政府発行のものがありすぐに用意できた。問題は遺産分割協議書で、お二人には子どもがいたが、出生証明はあるものの日本の戸籍謄本には記載されていない。ただし、婚姻後に妊娠してできた子どもで、Aさんは自分の子どもとして認知して、出生証明にも父親として名前が記載されていた。

 日本人の相続は日本の法律に基づくことになるから、戸籍謄本に子どもの名前が載っていないとなると、相続人は妻と兄弟姉妹になる(他に直系尊属がいない場合)。そのためまずは、戸籍謄本には記載されてはいないがフィリピンの出生証明がある子どもを相続人に加えることにした。

 その場合、フィリピン人妻と子どもの遺産分割協議書を作成する必要があるが、子どもはまだ4カ月の赤ちゃんなので法定代理人を立てなくてはならない。法定代理人は裁判所によって指名されるので、これまたややこしい手続きが必要だ。

 フィリピン人妻の姉を代理人にして裁判所に申請することにしたが、その手続きを弁護士に依頼したら着手金だけで3万ペソ(約7万円)請求され、フィリピン人妻がそんな金はないと泣きこんできた。

 手詰まり状態でPRA に相談したら、「Self Adjudication(相続人が単独の場合の遺産分割協議書)に子どもがいる旨を記載すればよい」と、あっさり回答があった。