中南米
2017年3月6日 風間真治

中南米で学んだ「決めつけない」営業術

カリブ海に浮かぶ小国・ドミニカ共和国に住み、中南米の新興国を舞台に貿易事業を展開する風間さん。今回は、風間さんがビジネスを広げるなかで学んだ、海外で仕事をする際に実践している営業術についてのレポートです。

 私の会社はカリブ海のドミニカ共和国にあり、そこを拠点にして現在は中南米の全13カ国でビジネスを展開するまでに拡大してきました。中南米に拠点を置く日本の会社としてはかなり大きな規模にまで成長しましたが、その根幹を支えているのが海外営業力です。

 そのための努力は惜しまず、今もドミニカ現地のローカルスタッフと、個別のミーティングはもとより、週に1回の全体ミーティングを行ない、営業力を高める施策をコツコツと継続しています。

 今回は、私の経験をもとにして、外国人との付き合い方、海外での営業術について、考えてみたいと思います。

決め付けをしない姿勢が営業力の基本

 日本人も同じだと思いますが、初めて海外で営業するとなると、スタッフの中には「会話上手でなければならない」と思い込んでいる人がけっこういます。

 そんなとき、私はいつも、顧客とつながりを持つことは重要だが、「会話上手でなければ」「会話が盛り上がらなければ」という「決めつけ」をしてしまうと、形だけのつながりにとらわれてしまうので、よくないという話をします。大事なことはどのような人に対しても、「決めつけをしない」という姿勢だと思うからです。

 ドミニカ人というより中南米の多くのラテン系の顧客は、交渉の過程で、とても日本人の感覚では理解できない理不尽な要求や、唖然とする発言をすることが多々あります。

 つい最近の話です。ある商品でコンテナ貨物2本分、合計50トンのオーダーをくれた顧客がいましたが、相手の資金力に確信が持てなかったので、「無理せずに1本の受注で我々としては十分だ」ということを私から提案しました。ところが「心配してくれるのはありがたいが、どうしても2本のオーダーが必要」ということで、一抹の不安はあったものの最終的にはそのオーダーを受けることにしました。

 そうして出荷後、荷物がドミニカに到着する頃になって、予想通り、1本目は支払えるものの2本目は全額払えないという状況であることがわかりました。こちらとしては、
「だから最初からこちらは発注は1本でかまわないよ、と提案してあげたのに……。困ったけど、向こうも、こちらが1本にしときなと最初から伝えていたのに案の定だから、バツが悪いだろうな。何て言ってくるだろう」
 という気持ちで、相手の元を訪問をしました。

 ところがそこでこの客から出た言葉は、
「2本目のお金が払えないのは1本目の出荷が10日ほど予定より遅れたのが原因で、自分たちの責任ではない。2本目を支払い猶予しないなら、この貨物は全部キャンセルする!」
 という開き直りに近い発言でした。貨物はすでにドミニカに到着しているので、今更キャンセルされるとこちらが困るのも、もちろん相手は計算して言っているのです。

「支払いができなくて、迷惑をかけて申し訳ない」という発言は皆無。日本にいた時の感覚ではとても信じられませんが、このようなやりとりは中南米で取引をしている以上、非常に頻繁に起こるもので、珍しいことでありません。

 あらかじめ、2本の契約を受けた時にこうした最悪の事態も想定しておき、事前に要所要所に手を打っておかないと、会社は回らなくなります。顧客とは取引上仲良くなっても、絶対に隙を見せてはいけないのです。

 この例以外にも、突発的にこちらに不愉快な態度や不利なことをつきつけてくるケースは多々ありますし、そうした時は「何か相手にも突発的な事情があったはず」と柔軟に、かつ、ひとつひとつ項目ごとに掘り下げて考えることが大事です。小さなすれ違いが思わぬ方向に局面を変える場合も多く、そうした時に「決めつけ」をすると、大体がおかしな方向にいくことは、経験上間違いありません。

ドミニカのダンスパーティは大盛況。夜を徹して楽しむ【撮影/風間真治】