中南米
2018年2月19日 風間真治

中南米でも広がる仮想通貨取引。
ドミニカ共和国の事情とは?

マイニングをするドミニカ人の経済状況は?

 ミートアップで知り合ったドミニカ人の中に、マイニングをしている人がいたので話を聞きました。
 
 彼はマイニングの設置などの手伝いも副業でやっていて、それだけで現時点の米ドル換算で月200ドルほどを稼いでいるそうです。ドミニカ人で仮想通貨のマイニングに興じている人は最近どのぐらいいるのか聞いてみると、1カ月に1人は新規の客がいるというので、驚きました。
 
 イーサリアムという仮想通貨の採掘などを中心に、仮想通貨マイニングのコミュニティも広がりつつあるのだとか。「ビットコインは採掘してないのですか?」と聞いてみましたが、電気代が高いのとマイニングの競争が激しく、今は利益が出ないのだそうです。ちなみにドミニカ共和国の電気代は20円/1キロワット前後で、日本とあまり変わらないと思います。

 実際にその人の家に行きマイニングをしているのを見せてもらいましたが、エアコンの音を少し大きくしたぐらいの音とともに、複数の機械が動いていました。

ドミニカ共和国で仮想通貨のマイニングをしている人も多い【撮影/風間真治】

 電気代を引くと利益にして月に200ドル程度だそうで、投資の回収までに約1年半かかるのだとか。このドミニカ人の月収が250ドルだそうで、それを考えると確かに月200ドルは魅力なのかなとも思いました。彼は、本業で250ドル、副業で約200ドル、自身のマイニングで約200ドルと、月に合計約650ドル(約7万円)稼いでいるということになります。

ドミニカ人の理想と現実

 ドミニカ共和国には、通常の地域より電気代が低く抑えられ、かつ上限が決められているような、貧しい地域があります。今の彼の目標は、24時間マイニングをフル稼働させても電気代が上がらない、これらの地域で収入を上げることで、自分や親戚の子どもを、少しでも良い教育を受けられるような学校に行かせることだそうです。
 
 稼働する機械を今後、今の3倍にする計画があると希望に満ちた様子でしたが、「ドミニカ政府はいくら自分たちが泣いていても助けてはくれない、自分たちの生活や子どもの教育を助けてくれるのは、この種の機械たちだよ」という言葉が印象的でした。

「機械たちが稼ぐのは、法定通貨の円や米ドルという”お金”ではなく、仮想通貨で、まだ使える場所がほとんどないよね? 確かに仮想通貨を法定通貨に変えることができる場所はあるけど、それでも収入として考えられるのかな?」と質問してみました。

 彼の答えは、「まだまだ個人レベルでも、ミートアップなどを通してドミニカ共和国の通貨ペソと交換してくれるコミュニティが広がりつつあるので、交換には困らない」とのこと。「もっとこの種のコミュニティを増やしていきたいし、理想としては仮想通貨で支払いができるような学校やスーパーマーケットが生まれてくる社会がいい、そうすれば我々のような貧しい層でも、もっと生活が豊かになるよ」と話してくれました。

 彼と話していて不思議な気分になったのが、私たちが小さな頃から当たり前に暮らしてきた法定通貨を使う経済圏、いわゆる資本主義下の経済圏とは異なる経済圏が、ドミニカ共和国のような小さな国でも、生まれてくる可能性があるのかなということです。
 
 ここで紹介した仮想通貨をマイニングする人たちも、彼らの独自の活動から広がり、仮想通貨を他の法定通貨と交換するいわゆる「コミュニティ」ができ、これらがより広がりを見せると、それはどんな小さなものでも経済圏ということができます。
 
 ビットコインがどこまで将来性があるかについてはまだ分かりませんし、特にこれだけ価格の乱高下が生まれていると通貨としては使いづらいと思いますが、もしビットコインが衰退したとしても、それに代わるような何かは出てくる気がしています。
 
 そういう意味では、仮想通貨やブロックチェーンの技術そのものはまだ始まったばかりだなという気がします。今現在の「お金」と呼ばれるものが唯一の価値交換の手段である時代は、今後数年のうちに大きく変わるのは間違いないし、それは発展途上国のような、よりローカライズしたところから、少しずつ変化が生まれてくるのではないかと。
 
 もし政府が生活を助けてくれなくても、それらのコミュニティの中では生活を支え合える基盤が生まれるのかもしれないし、労働の定義すらも変わるかもしれません。

(文・撮影/風間真治)

著者紹介:風間真治(かざま・しんじ)
商社の海外営業、中南米のドミニカ共和国駐在を経て独立。現在はカリブ海に浮かぶドミニカ共和国に住みながら、主に中南米諸国でこれから経済が成長していくような国々を頻繁に回り、未知なる客先を訪ね歩いては様々な新規事業の開拓に取り組む日々。中南米ではいくつかの国に会社を作り、貿易事業、港湾の通関業、不動産事業、インターネット事業、中古車販売業などを手がける。