中南米
2018年4月2日 風間真治

ハイパーインフレで物々交換経済状態のベネズエラ。
国主導で仮想通貨を発行した現状をレポート【後編】

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カリブ海に浮かぶ小国・ドミニカ共和国に住み、中南米の新興国を舞台に貿易事業を展開する風間真治さん。今回は、深刻な経済危機下で国主導で仮想通貨「ペテロ」を発行したベネズエラで活動する日本人、本間敬人さんとの対談の後編です。

●関連記事 経済破綻後、仮想通貨を発行したベネズエラの現状は?【前編】

外貨で配給物資を買う危機的状況

風間:前回、今のベネズエラ人はスーパーなどで物資が手に入らないため、どこかから物資を仕入れてきて路上などで転売をしている「バチャケーロ」と呼ばれる人たちから購入する、という話をしていただきましたが、バチャケーロたちが販売するストリートの市場では、通常の市場よりかなり高く売られている感じでしょうか?

本間:高いですね。前は通常のスーパーの値段の2倍ぐらいでしたが、今年に入り食料品や生活必需品はさらに非常事態になっているため、通常のスーパーの値段の6倍ぐらいでやりとりするケースも多いです。それなので貧困層はもちろん、一般のベネズエラ人も、外貨を持ってない人などは、必要な物さえ手に入れることが困難です。

ベネズエラ政府も配給はしてくれるのですが、不定期でいつ来るか分かりませんし、来たとしても、無償で配られるわけではなく有償のものが多いです。配給が来るという噂が立った時は、前日の深夜から、それを受け取るために長蛇の列ができます。それでもまともに受け取れる人はわずかですので、路上でゴミをあさり、そこから食料を得ている人もかなりいますね。

物資が到着するのを聞きつけて並ぶ人たち。配給が来ると知らせがあった場所では前日の深夜から長蛇の列ができる【撮影/本間敬人】

風間:ベネズエラ政府の経営の稚拙さを露呈しているような状況ですね。貧困層などは無償の配給がないと本当に餓死してしまいますよね。

本間:厳密には「クラップ」と呼ばれる政府からの無償配給もありますが、それも不定期ですね。しかもベネズエラの国内経済も回ってないので、メキシコやブラジルから輸入をしています。こんな経済危機の状況で、配給用の簡易な食料すらも外貨を使い輸入をしているわけです。いかにベネズエラ政府の経済の舵取りが狂っているかがわかると思います。

ベネズエラの人は今、本当に明日の食べ物にも苦しんでいる毎日ですので、私としては、少しでも世界中の人にこの状況を知って欲しいです。この国は危機的状況なんです。

ゴミの中から食料を探す人々【撮影/本間敬人】

マフィアが暗躍する世界

本間:今週、ベネズエラのある地方都市で、米ドル換算にしてわずか2ドルくらいのお金の貸し借りでもめたベネズエラ人が相手を殺してしまい、空腹のためにその人肉を食べた、というニュースが流れて、ベネズエラ国民はかなりのショックを受けました。私が危惧しているのが、このことが発端になり、食べ物を巡って本格的に大勢の殺し合いが始まってしまうのではないかということです。人は追い詰められるとどういう行動に出るかわかりませんから。

風間:恐ろしい状況ですね。隣人がいつ襲ってくるかわからないような状況で、法律や警察も、今は機能してないんですね?

本間:機能してないですね。こうした警察などの法的な装置が機能しなくなった国や地域で、力を持ち始めるのがマフィアですが、ベネズエラも同じで、しかも一部のマフィアは政治家とつながり、暴動を鎮圧する一方で、秘密裏に暴動をしている側にも加わって、わざと混乱させるといった仕事を請け負っていたりしています。闇は深いと思います。

風間:マフィアに力があるから、そのマフィアに食べ物を頼る人も出てきているくらいなんですよね?

本間:マフィアは刑務所の中で自治区を作っているんです。そこはもうマフィアが権力を握っていて、食べ物も含めて外の世界より何でもそろっているんです。一部のベネズエラ人は、この「自治区」から食料をもらっていたりするぐらいですので。

風間:法が機能しなくなった世界で、マフィアが台頭してくるのは過去の歴史でもありましたが、ベネズエラも同じというのが人の根源的なものを感じますね。

本間:ベネズエラは警察官の給料も安いし、それ以上に、お金がもらえるかどうかも分からないという状況下でやる気が出ないから賄賂をせびりますし、お金のために自分の拳銃などをレンタルしています。モラルを超えてどちらかというと彼らも生きるために必死という状況です。

風間:警察もそんな状況とは、まさに無法地帯ですね。

ベネズエラの刑務所。刑務所内ではマフィアが刑務官を買収し、支配している【撮影/本間敬人】