中南米
2018年4月2日 風間真治

ハイパーインフレで物々交換経済状態のベネズエラ。
国主導で仮想通貨を発行した現状をレポート【後編】

紙くずにもできない旧紙幣

風間:ところでハイパーインフレで旧紙幣が紙くずになっていくという過程で、ベネズエラ政府はデノミにして大きな桁のお札を随時投入していたんですよね? それでも対応が遅かったからなのか、市中からお札が消えているというか、機能してない。ハイパーインフレが起きてからここ1年強の間の一連のデノミ政策の流れで、何が起きてきたのか、教えていただけますか。

本間: 2016年、デノミのために、政府が100ボリバル紙幣を一度すべて回収したのですが、新規のお札投入が1カ月ぐらい遅れて、その時は本当に国中からお金が消えてしまったので、私も食べる物などを隣人に頼らざるを得ないことがありました。

その後2017年の4月ぐらいに、政府から500ボリバル札が投入されたのですが、その後、どんどん通貨が切り下がり、今は10万ボリバル札(日本円で50円くらい)まで発行されています。

ベネズエラ政府の問題は、新規の紙幣を発行するために、まずそれまで出回っていた旧紙幣を全部回収して、その紙をリサイクルして、色と数字だけ変えて再利用する方式なんですよ。「廃止」ではなく「回収」というのがポイントです。

風間:それだとその時に出回っている紙幣が一度回収されて、次の通貨の桁が違う紙幣が新たに発行されるまでに、必ずタイムラグが生じますよね。その間は皆、お金が使えないで待つ状態なのですか?

本間:そうなんです。リサイクルが遅れた時は1カ月近く発行されない時があったりして、そうなると街からお金が消えてしまう期間が発生しますので、当然経済は大混乱です。紙の資源がもうないから、そうしているのでしょうが。

風間:ハイパーインフレだとお札は「紙くず」というイメージですが、ベネズエラの場合は資源不足、資金不足もあり、もったいなくて「紙くず」にはできないので、紙だけ再利用ということなんですね

本間:紙くずにもできないぐらい貧しい。2016年の年末ぐらいから、旧紙幣を回収してリサイクルしてもまだ紙が足りないため、街から「紙」自体が消えていく現象がありました。新聞紙とかも街から消えるみたいな。それぐらい紙不足が深刻でした。

風間:ベネズエラのハイパーインフレで、市中からお金が消えている、という報道は見たことあるのですが、実際話を聞くと、深刻さが伝わりますね。事情がかなり見えてきました。

本間:さらに、もう一つの問題は、先ほどお話をした10万ボリバル札ですが、そうした桁の紙幣を店に持ち込んでも、誰もお釣りを持ってないので、結局使えないということです。

風間:デノミが行なわれる過程は、書籍やインターネットでは読んだことはありますが、生で話を聞いたのは初めてです。興味深いですね。でも、そういうお釣りなどの問題があるとすると、暗号通貨は有効かもしれませんね。 デジタル上のデータだからお釣りがあるとかないとか気にしなくて良いですし。

ベネズエラが今、暗号通貨「ペトロ」を発行する必要に迫られているのは、アメリカから経済制裁を受けていて、新たな対外債権が発行できないから、その代わりの資金調達法として、という理由でしょうが、単純に目の前の紙不足を解決するためにも、暗号通貨のほうが便利ですね(笑)。紙のコストもいらないですし、お釣りの問題で悩む必要もないですから。これを機会に、少しでも経済がよい方向に向かえばいいのですが……。

なかなか流通してない貴重な10万ボリバル札【撮影/本間敬人】