橘玲の世界投資見聞録
2018年4月26日 橘玲

最近日本でよく見かけるネパール人労働者たちは
GDP世界172位の貧困国から来ている

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 3月後半から2週間ほどネパールを訪れ、カトマンドゥとポカラに行ってきた。忘れないうちに、旅の感想を書いておきたい。

 下はカトマンドゥのトリブバン国際空港から見た朝日。北京では同じような夕日を見たが、このように太陽を目視できるのは大気が濁って光を反射しているからだ。カトマンドゥは盆地で、都市化が急速に進んでいるため、近年、大気汚染が深刻な問題になっている。

カトマンドゥの空港から見た朝日     (Photo:ⒸAlt Invest Com)

 

 実際、カトマンドゥの街を歩くとマスク姿の地元のひとをたくさん見かける。大気汚染の最大の原因は古い車やバイクの排気ガスで、道が狭く常に渋滞しているため、さらに汚染が進むのだという。

 カトマンドゥの人口は100万人を超え、2030年代には300万人になると予想されている。それに対してインフラは脆弱で、1日に何度も停電するため道路に信号機を取りつけることができず、主要な交差点では排気ガスのなかで警察官が手信号で車を捌いている。それ以外の交差点は早い者勝ちで、先に車を突っ込んだ方に優先権がある。これでは交通事故が増えるのは当然だ。

カトマンドゥでは地元のひとたちもマスクをしている  (Photo:ⒸAlt Invest Com)


 

友人と談笑するために不合理に銀行に並ぶ若者たち

 朝9時ごろ、ホテルを出て街を歩いていると、建物の前に長蛇の列が出来ているのを見かけた。ネパールでは男女が同じ列に並ぶことはないらしく、手前が女の子の列、向こう側が若い男の子の列だ。

 そのほかにも2カ所、同じような長い行列に遭遇した。彼らが入っていこうとしているのは、どれも同じ銀行の支店だった。

 そのあと、片言の英語を話すタクシーの運転手に訊いてみたのだが、彼らはネパールの地方からカトマンドゥに働きにきている若者たちで、ラーマ王を祀るラム・ナワミ(3月25日)やネパールの旧正月(4月14日)のために故郷に送金しようとしているらしい。しかしこの行列では、送金するだけで1日がかりになってしまうだろう。

 翌日、ヒマラヤを空から眺めるマウンテン・フライトに行くために朝5時半にホテルを出たのだが、この銀行の前にすでに何人かの若者が立っていた。10時開店とすれば、5時間ちかく並ぶことになる。

 その後、ATMから現金を下ろすために別の銀行に寄ったのだが、そこには行列はできていなかった。どうやら、送金手数料の安い一部の銀行に出稼ぎの若者たちが殺到しているようだ。

 しかし、これはどう考えても不合理だ。実家にいくら送金するかはわからないが、送金手数料のちがいはせいぜい数百円だろう。だったら、送金は近所の銀行でさっさと済ませて働くなり、デートに行くなりしたほうがずっとマシだ。さらに、この銀行の看板を見るとスマホで送金できるような説明がある。いったん設定すれば、何時間も並ぶ必要はなくなるだろう。

 しかし行列する若者たちを見ると、友人と談笑したりしてみんな楽しそうだ。だとしたらこの行列は、彼らにとって年に何度かのイベントなのかもしれない。

銀行前に行列する若者たち。手前は女の子の列  (Photo:ⒸAlt Invest Com)