橘玲の世界投資見聞録
2018年8月16日 橘玲

ロシアへの併合で活気づく「係争地」クリミアは
クレジットカードもATMも使えなかった
[橘玲の世界投資見聞録]

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 セバストポリやヤルタのある黒海のクミリア半島にはいちど行ってみたいと思っていたのだが、2014年のロシアへの編入をウクライナが認めず、係争地になったことで諦めていた。ところがロシアワールドカップに合わせて観戦者にFAN IDが交付され、これがあればロシア国内を自由に移動できることになり、クリミアへの自由旅行が可能ではないかと思いついた。

 意外なことに、モスクワからクリミアのシンフェローポリ空港までは複数の航空会社がたくさんの便を飛ばしており、インターネットであっさり予約が取れた。いつも海外の宿泊予約に使っているExpediaはクリミア半島内のホテルをいっさい扱っていなかったが、別の予約サイトにはたくさんの宿泊施設が出てきて、セバストポリ市内のいちばん立派そうなホテルもかんたんに予約できた。

 こうして1泊2日でクリミアを旅してきたのだが、ここで最初に断っておかなければならないのは、ウクライナはクリミアを自国領と主張しており、国際社会もロシアへの併合を認めていないことだ。そのような場所をなにも知らない外国人が「観光」することを不快に思うひともいるだろうが、「なにも知らない」からこそ自分の目で見たいということをご理解願えればと思う。

クリミア半島のセバストポリ       (Photo:ⒸAlt Invest Com) 

 

クリミアはインフラ整備を進めていた

 セバストポリへの旅で最初に驚いたのは、モスクワの空港でクリミア行きの便が満席だったことだ。その理由は小学生の集団で、どうやらこれから夏休みのキャンプに行くらしい。でも、「係争地」で子どものキャンプ?

 次に驚いたのは、シンフェローポリ空港がものすごく立派だったことだ。あとで調べてみると到着したのは今年4月18日に運用を開始したばかりのニューターミナルで、確かに新建材の匂いがした。かなり古めかしい旧ターミナルからは1キロほど離れているらしい。

超近代的なシンフェローポリ空港      (Photo:ⒸAlt Invest Com) 
シンフェローポリ空港の内部      (Photo:ⒸAlt Invest Com) 

 

 宿泊予定のホテルから2日ほど前にメールが来ていて、空港からの送迎はどうするか訊かれた。いつもは公共交通機関を使うか空港タクシーを利用するのだが、どんな様子かわからないので頼むことにした。その料金が4000ルーブル(約7500円)で、これはロシアの物価としてはかなり高い。モスクワ市街から空港までは30キロ以上離れているが、それでも3000円かからないのだ。

 しかし迎えの車に乗ってみると、これが法外な料金というわけではないことがわかった。ちゃんと調べていなかったのだが、クリミア半島の中央に位置するシンフェローポリ空港から黒海に面したセバストポリは距離にして100キロ以上あり、そのうえすべて一般道なので順調に走っても2時間半くらいかかるのだ。しかも空港への道路はもともとは1車線だったらしく、拡幅工事をあちこちでやっていてそのたびに渋滞する。

 さらに驚いたのは、ロシア国内でネットにつなぐために購入した国際SIMが使えないことだ。それだけでなく、スマートフォンの電波すら入らない。最初は田舎で電波がこないのかと思ったが運転手はふつうにスマホでしゃべっている。

 これだけでもじゅうぶん不思議だったが、ほんとうの驚きはこのあとにやってきた。