カンボジア
2012年9月18日 木村 文

カンボジアの最貧州でブランド野菜が誕生
山形のNGOの取り組みが現地を支えるビジネスに

プノンペンで販売開始!

 スバイリエンでIVYが支援する野菜生産グループ(スバイリエン農産物組合、組合員約300人)はここに目をつけた。遠いスバイリエンから購買力のある層が住む都心へ、野菜を毎日大量に運ぶのには輸送費がかかる。だが少量でも、付加価値をつけて高めに売ることができればビジネスとして成り立つと考えた。

 彼らは今年2月、プノンペンの市場に小さなスペースを借りた。スバイリエンから運んだ野菜を並べ、「健康な家族のための健全な野菜」と書いた看板を掲げた。価格設定は、同じ市場の他の店より1割ほど高め。それでも売り上げは順調に伸びて、販売開始3カ月後には、当初の3倍の1000ドル近くになった。

プノンペン南部のバントラバエク市場にあるスバイリエン農産物組合の販売所【撮影/木村文】

 もっともこれだけの売り上げでは、利益はほとんど出ない。車両の提供など、IVYの「援助」がまだ必要であることも事実だ。ただ、市場での評判を知った自然食材店やレストランにも販路が広がっている。「安全」が売り物になると実証されれば、組合内でも、あるいは組合外でも、無農薬野菜の生産に取り組む農家が増えていくだろう。一歩ずつ、自立に近づいていることは間違いない。

 首都から遠く、貧しく、規模の小さな農家であるがゆえに、彼らは知恵を絞った。IVYが伝えた日本の東北の農村の経験も、たくさんのヒントを与えただろう。その結果、最貧州から高級ブランド野菜が誕生する、というおもしろさ。時代のニーズを読みきった付加価値さえ見つけられれば、弱点は乗り越えられることの証明だ。

(文・撮影/木村文)

筆者紹介:木村文(きむら・あや)
1966年生まれ。国際基督教大学卒業後朝日新聞入社。山口支局、アジア総局員、マニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住、現地発行のフリーペーパー「ニョニュム」編集長に(2012年4月に交代)。現在はフリー。