アラブ
2021年4月30日 岩永尚子

【緊急レポート2021】
ワクチン接種で成功したイスラエルやUAE、
新規感染者数が日々最高値を更新中のトルコやイラン。
コロナで格差がますます広がる中東の今は?

日本にいるとほとんど情報が入って来ない、中東諸国での新型コロナウイルス感染拡大の状況を、日本では珍しい女性の中東研究家として活躍する岩永尚子先生がわかりやすく説明します。

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 新型コロナウイルスの感染が世界中に広がり1年余り経過しましたが、現在、中東での感染状況はどのようになっているのでしょうか。

中東の新型コロナ感染状況は3つに大別される

 新型コロナ感染状況は、中東においても、日本と同じように変異種の拡大に悩む国が大半です。感染対策としてはロックダウンや商店の営業停止など人の流れを止める方法とワクチン接種という2種類の方法が取られていますが、状況は大きく次の3つに分けられるでしょう。

1)日本と同様に、感染対策にもかかわらず急速に感染者数が増加している国。
2)おもに人の流れを止めるという方法で何とか感染拡大を押しとどめている国。
3)従来からの感染防止策を取りつつも、おもにワクチンによって感染が抑えられていると考えられる国。
 
 1)に挙げられる国としては、トルコ、イラン、イラク、イエメン、バハレーン、クウェート、カタール、パレスチナ、チュニジア、オマーンなどがあります。おそらく変異種の拡大によるものだと思われますが、いずれの国でも急速に感染者数が増加しています。
 
 なかでもトルコとイランでは感染が急速に広がっており、日々過去最高感染者数を記録してします。トルコの総人口は約8200万人(2019年)ですが、現在、1日の新規感染者数は6万人を超えています。また、イランでは今年3月11日の感染者数は約8000人でしたが、1カ月後の4月11日には2万人を超えています。これを受けて4月10日に、首都のテヘランで生活必需品を除く商店の営業が禁止されました。
 
 2)の例としては、モロッコ、アルジェリア、ヨルダンがありますが、いつ、2)から1)へと転じるかわからない薄氷を踏むような状態です。
 
 これらの国々でもワクチン接種は開始されていますが、まだ十分とはいえません。接種が1回以上済んだ人の割合はモロッコ11.7%、アルジェリア%不明(7万5000回)、ヨルダン5.4%(2014年4月14~18日:資料:Our World in Data)といった状況で、かなり強硬な外出禁止措置など人の流れを止めるという手法に頼っています。
 
 モロッコでは夜間外出禁止令が昨年12月23日よりずっと継続されています。また、ヨルダンでも学校閉鎖が2月に一部で緩和されたものの、3月15日から再度閉鎖となったままです。

ワクチン効果でマスクなしが実現したイスラエル

 3)の事例としては、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアが挙げられます。ただし、サウジアラビアは4月初旬から感染者数が減少傾向から増加傾向に転じ、4月22日には急増しました。

 日本経済新聞社とFinancial Times(フィナンシャル・タイムズ)の集計によれば、100人あたりのワクチン接種回数は、イスラエルが113.8、UAE が95.1、バハレーン61.5、カタール40.9、モロッコ23.8、トルコ23.1、サウジアラビア19.2、クウェート19.0、ヨルダン5.4、オマーン3.9、パレスチナ3.7、チュニジア1.5、イラン0.6、エジプト0.4となっています。ちなみに日本はチュニジアと同じ1.5回です(2021/4/15)。
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/)。
 
 イスラエルでは4月18日、屋外でのマスク着用義務が緩和されました。UAEでは飲食店での仕切り版なしでの食事提供が可能となりました。サウジアラビアでも5月17日より国際線の就航が再開される見込みとなっています。
 
 もちろん、これらの国々でも従来の人の流れを止めるという感染対策も取られていました。UAE北部のシャルジャ首長国では、2月から飲食店や食料品店の従業員でワクチンを接種していない人には2週間に1度のPCR検査を受けることが義務づけられ、ドバイ首長国も3月にはロックダウンされていました。