カンボジア
2013年2月20日 木村 文

プノンペンの癒し系休日
”プチ”がカンボジアの生きる道

朝日新聞のマニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住、現地のフリーペーパー編集長を務めた木村文記者が、リゾート地としてのカンボジアの魅力についてレポートします。

 ベトナムのホーチミン市に住む女性の友達(37)が、プノンペンにたびたび遊びに来る。ベトナム在住歴の長い彼女は、ベトナム語も堪能だし、友達も多い。暮らしを満喫し、娯楽にも不自由はないはずだ。人口約800万人の大都会ホーチミン市から、150万人の小都市プノンペンへ、何を求めて彼女はやってくるのか。

「手頃な価格で楽しめる、おしゃれな空間がいっぱい。緑も多いし、ホーチミンよりもよっぽど『プチ・パリ』です」と、彼女は言う。

 日本では、雑貨ブームに乗って、女性誌で特集が組まれるほどおしゃれなイメージが定着したベトナム。その地の居住者さえ引き付けるプノンペンの魅力って何なのだろう。「アラフォー女性の癒しの休日」をテーマに、わが町を見つめ直してみた。

 キーワードは「プチ」。バンコクやホーチミンやシンガポールと、規模で肩を並べようとは思わない。でも、ちょっとした楽しさやおいしさや喜びが散りばめられた、手頃で上質な町。日本でいえば東京や大阪ではなく、福岡や仙台のような都市。それがプノンペンの生きる道、ではないかと思ったりする。

箱庭のようなブティックホテル

 最近プノンペンに増えているのが、小ぢんまりとしたブティックホテルだ。特に高級住宅街にある庭付きの大型ビラ(邸宅)を改装したプチホテルが目立つ。

 客室数は20部屋前後で多くないが、敷地内にはレストランと小さなプールがあり、周囲を熱帯の木々や花々が覆う。高い塀の向こうは一般住宅やサービスアパートなのだが、緑に囲まれているせいか、狭いながら落ち着いた空間になっている。

 たとえば住宅地ボンケンコン地区にあるヒラリーズ・ブティックホテル。1960年代に建てられたビラを改装した、典型的なプノンペン型プチホテルだ。インテリアには、カンボジアらしい木彫や布を多用し、重厚感がある。

 ホテルの敷地は、建物とプールとそれを囲む木々でいっぱいいっぱいだが、それがかえって箱庭を見ているようなかわいらしさを感じさせる。宿泊はツインルームで一泊5000円前後(朝食付き)。客は欧米人が多い。

 宿泊しなくても、5ドル(約450円)支払えば、プールサイドでのんびりとカクテルを味わうこともできる。在住者には、ちょっとした気分転換ができる場所だ。
世界遺産「アンコール遺跡群」のあるシェムリアップとくらべ、プノンペンはビジネスの町と言われる。観光資源も少ない。ビジネス客が急増する一方で、観光客が大挙して訪れないからこそ、こうした個性豊かなプチホテルが成立するのだろう。

プノンペンに急増するブティックホテル。古い大型邸宅を改装したプチホテルが多い。ヒラリーズ・ブティックホテルはレストランやプールだけの利用も歓迎している=プノンペン市内で【撮影/木村文】