ベトナム
2013年3月4日 中安昭人

「広告代を月餅50箱で支払いたい」
そんなお客さんもいるベトナム広告集金事情

広告にミス発覚! 社員総出で訂正シール貼り

 弊社のほうに非があり、広告代を頂けないこともある。

 例えば広告の掲載内容に間違いがあった場合だ。掲載する広告は何度も校正をし、もちろん広告主の方にも最終データをご確認頂いてから掲載する。この鉄則を守っていれば、まず間違いは起こらない。しかし、すべて作業が終了して「いざ、印刷」というギリギリのタイミングで、「営業時間を30分延長することにしたから、直しておいてくれる?」といった内容の電話を頂くことがある。そういう場合は、どうしてもチェックが甘くなるので、間違いが発生しやすい。直したつもりが、印刷所のほうでデータの入れ替えを忘れていて、古いデータのままで印刷をしてしまったり、修正する際に、こちらが間違った数字を書き入れてしまったり、など。

 いかなる事情があれ、間違った情報を掲載してしまったのは、こちらの責任なので、広告掲載料は頂かないのが原則だ。場合によっては、次号以降、同料金のまま広告サイズを大きくする、もしくは何号分が掲載を無料にする、などの対応をする場合もある。

 さらに間違いの内容が深刻な場合は、町に出回った雑誌を回収して、正しい情報を印刷したシールを作り、それを雑誌1冊1冊に貼っていく。日本で流通している雑誌に比べれば、遙かに数は少ないとは言え、それでも2万数千冊を回収して、訂正シールを貼り、それをもう一度、配達して回るのは決して楽な作業ではない。

 しかし、もっと辛いのは広告主さんのほうだ。お金を工面して広告を掲載したのに、間違った情報を掲載されてしまったのでは、むしろ商売にとっては「逆効果」にもなりかねないのだから。

 社員も、それをよく理解しているから、修正作業が発生したときは、日本人もベトナム人も、営業も編集も経理も総務も関係なく、みんな総出で作業にあたる。例えそれが週末であっても、深夜であっても、関係はない。

 このような苦労はあるにしても、現地で商売をされている方々のお役に立てるのは、やはり嬉しいものである。何年も前の話になるが、ある広告主の方から、「今まで、広告なんて金がかかるだけで大して役に立たないと思っていたけど、実際に出してみると、いや、びっくりするほどの効果があってね。こんなことなら、もっと前から広告を出しておくべきだったと後悔しましたよ」という、とてもありがたいお言葉を頂いたことは、今でも忘れられない。

 このような、幸せな関係を今後も積み重ねていきたいものである。

壁に書いてある電話番号も広告の一種。私の知る限り、業種は「KH Cat B Tong」=「コンクリートを壊してくれる業者さん」が圧倒的に多い。他にはバイクタクシー屋さんの番号が書いてあるものも、ちょくちょく見かける【撮影/中安昭人】
店の前に大きく書かれているQuang Caoというのが「広告」の意味。町の中でよく見かけるが、「広告代理店」ではなく、LEDや電飾の看板を扱っているところが多い【撮影/中安昭人】

(文・撮影/中安昭人)

筆者紹介:中安昭人(なかやす・あきひと)
1964年大阪生まれ。日本での約15年の編集者生活を経てベトナムの大手日系旅行会社・エーペックスベトナムが発行する「ベトナムスケッチ」(現地の日本語フリーペーパー)の編集長として招かれ、2002年7月にベトナムへ移住。その後独立し、出版および広告業を行なう「オリザベトナム」を設立。現在は同社のオーナー社長。社員数は約40人で、「ベトナムスケッチ」(月刊)以外に、「アットサイゴン」(タブロイド紙・隔週刊)、「ヘリテイジジャパン」(ベトナム航空の機内誌・季刊)などを発行。2000年に結婚したベトナム人妻との間に7歳になる娘が1人おり、ベトナム移住以来、ホーチミン市の下町の路地裏にある妻の実家に居候中。