カンボジア
2013年6月6日 木村 文

「日本品質」の野菜を生産、販売
大阪の農業ベンチャー、カンボジアのスーパーと提携

生産地「中国」から「カンボジア」へ方針転換

 野菜の多くをベトナムなどからの輸入に頼るカンボジアでは、農薬使用の有無など「食の安全」に対する関心が高まっている。首都を中心に中間所得層も増えており、多少高くても有機栽培をうたった商品や、国内産の野菜や果物を買う人が増えている。

 JFP社の阿古社長は当初、カンボジアではなく、中国での野菜生産・販売を検討した。「中国のスーパーで、日本産のリンゴが高級品として販売されているのを見て、これでも売れるのかと驚いた。安全な食品の需要は極めて高いと思った」という。

 しかし、中国での農業は、土地の価格が場所によっては日本よりも高いこと、土壌汚染がひどく浄化に3年以上かかること、日本式の手間をかける生産管理方式が中国人の気質に合わないと思ったこと、などから断念。中国は「消費地」としてとらえ、アジアの別の場所で生産する方針に転換した。

 カンボジアへは、農村地帯に学校を建設する事業で何度か足を運んだ。だが、農業は機械化されておらず、農家の収入も十分ではない。子供たちは学校へ入学するものの、卒業まで通い続けることは難しい。一家総出で働かなくてはならないのが現状だからだ。

 カンボジア国民の7割が農村地帯で暮らしているとされるが、その農村は経済成長から取り残されている。阿古さんは、「カンボジアを豊かにするには、この国の基幹産業である農業を変えなければならない」と感じたという。

将来は中国、東南アジア各国への輸出を目指す

 自社農園で生産を始めた有機栽培のオクラは、3月に完成し、パッケージもできた。250グラムで3000リエル(約75円)。カンボジアで一般に販売されているオクラより高いが、しっかり整った形と鮮やかな緑色で、違いは一目瞭然だ。スーパーで販売するほか、プノンペン市内の和食店でメニューとして好評を得ているという。

 JFP社では、自社農園で野菜を生産するだけでなく、ハッピー・ファーム社の農園でも日本式の土壌改良や技術指導に取り組む。カンボジア農家の日本での研修や、日本の農家によるカンボジアでの指導も予定。3年から5年をめどに、日本をはじめ、欧州などの有機栽培基準を導入し、将来は中国、東南アジア各国への野菜の輸出も手がけたいと考えている。

日本から輸入された高級柿。このほか、ジャパン・ファームプロダクツは奈良県産の高級イチゴや、長崎県産のビワも輸入している【撮影/木村文】

(文・撮影/木村文)

筆者紹介:木村文(きむら・あや)
1966年生まれ。国際基督教大学卒業、米インディアナ大学大学院ジャーナリズム科修了後、朝日新聞入社。山口支局、アジア総局員、マニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住。2013年6月発行の月刊誌「プノン」編集長。