橘玲の日々刻々
2013年9月17日 橘玲

中東シリアの終わりなき殺し合い
[橘玲の日々刻々]

 シリアの内戦は“宗教戦争”で、シーア派のアサド一族の背後にはイランとヒズボラ(レバノンのシーア派武装組織)がおり、それに対抗する反政府勢力はサウジアラビアなどスンニ派の大国と英米仏など“反イラン”の西欧諸国の支援を受けています。双方が容易に武器を入手できる以上いつまでたっても決着はつかず、このままでは戦闘がえんえんとつづくだけです。

 長年の圧制に苦しんできたスンニ派のひとびとのアサド一族とアラウィー派への憎悪は深く、いったん立場が逆転すれば旧体制への徹底した報復が行なわれるのは明らかです。現政権もそのことを熟知しており、“反乱軍”を皆殺しにする以外に生き延びる道はないと考えます。この状況を打開するには10万人規模の平和維持軍を送り込み、内戦終結後の治安維持を保障しなければなりませんが、イラクでの失敗の後、アメリカも含めどこもそんな火中の栗を拾おうとは思いません。

 首都ダマスカス近郊で化学兵器が使用され、サリンと見られる神経ガスで市民など1300人以上が死亡する悲劇が起こりました。現在はアメリカの主導で政府軍への空爆が検討されています。

 しかし中途半端な介入では、事態はなにひとつ変わらないでしょう。シリアの内戦による死者は10万人を超え、さらに悪化の一途を辿っていますが、終わりなき殺し合いを止めるための知恵は誰も持っていないのです。

『週刊プレイボーイ』2013年9月9日発売号に掲載