タイ
2013年12月24日 沼舘幹夫

タイ人たちは反政府デモをどう考えているのか

DACO編集部タイ人スタッフ13人インタビュー

タイ人スタッフ13人インタビュー

 インタビューもすべてを物語るわけではありません。

(Aさん)
 気持ちのうえでは今回のデモを応援している部分もあるけれど、それほど熱心ではないし、私はデモには行かない。方針がよく分からないし、何を求めているのかはっきり見えないから。
 今回のようにダラダラとやって、経済にも影響が出て。本気で国をよくしたいと思っているなら、何か実になる行動を起こしてと言いたい。
 選挙をやって仮に民主党が勝ったとしても(現与党がまたお金で票を買って勝つ可能性のほうが高いけれど)、民主党は行動が遅いから、国民に嫌われるだけ。そしてまた現与党が出てきて、というように堂々巡り。根本には教育に問題があると思っている。

(Bさん)
 今回のデモには賛成しているし、私もよく参加する。もともと今の政府の政策には理解できないところが多い。
 1台目の車の購入に税金優遇した政策は、お金が十分にない人にどんどん車を買わせて、お金の使い方を考えさせる力を奪った。ほかにも政策が安易で短期的なものばかりだし、汚職が多すぎる。
 貧しい人でも30バーツ(約90円)で病気の治療ができる制度を、今、政府は止めようとしている。政府は国民を助けると言っているけれど、本当にお金がなくて困っている人はどうやって助けるというのか? 矛盾していて政府のことを理解できない。
 いろんな情報を知れば知るほど、政府がやっていることは国のためになっていないと感じる。だから、この国の将来のために、デモに参加して抗議している。

(Cさん)
 デモは即刻やめるべきだと思う。もともとは恩赦法に抗議するところから始まったのに、恩赦法が廃案になってもデモを続け、議会を解散して選挙をすることが決まってもなおデモを続けている。何を待っているのか、何を求めているのか、さっぱり分からない。
 人民議会? この国は民主主義なのだから、人民議会なんてありえない。選挙を待つべきだ。
 デモは役所を封鎖したりしているけど、公務員はみんなちゃんと働いているし関係ない。選挙をやっても、たぶん民主党は政権与党にはなれないだろう。民主党は何年も選挙に勝っていない。それは政策のせいではないのか?
 選挙ではタクシンがお金で票を集めているというけれど、実際には、たった10.5%しかそれに当たらないという調査結果が出ている。タクシンは票をお金で買っているわけではない。タクシンの政策が多くの人に気に入られているからこそ支持が得られているのからではないか。
 タクシンは目に見える形で国を発展させた。タクシンが不正をしたという人がいるが、(民主党の)アピシットもステープもみんな不正をしている。これからも不正をした人が出るたびに今回のようにデモをするというのか?

(Dさん)
 今回のデモにはあまり賛成はしていない。今の政府は間違っている、汚職をしていると、デモのリーダー、民主党側は言っているけれど、民主党が政権をとっていたときも汚職はしていた。ただ、それがあまり表に出なかっただけ。
 プアタイ(=現与党)が政権をとったら、民主党はプアタイがいかに悪いかを国民に説いて、プアタイだけが悪くて、民主党は正しいというように言っている。
 今回のデモによって、政府は下院を解散して選挙をすることを決めたけれど、プアタイ、民主党という2つの大きな党の対立が続くことは変わりないし、また良くない人が国の実権を握るのだろう。
 せっかく良い人がいても選ばれない。結局なにも問題を解決できないのではないか。2つの党からどちらからを選ばなくてはいけない状況は変わらない。

(Eさん)
 今回のデモは私にとってもアメージング・タイランドだ。大学で歴史を専攻してきたけれど、こんなデモは今までになかった。
 デモには反対だ。選挙を認めないから。選挙は民主主義の基本。民主主義の象徴である民主記念塔をデモの場所にし、民主主義の思想を重んじていると言いながら、選挙には反対と言うのはよく分からない。
 デモに参加している人の中にも、どうなるのかよく分からないと言っている人がいたりして、今回のデモは本当に理解できない。

(Fさん)
 デモという形で意見を主張することは良いことだと思う。けれど、参加している人の多くが純粋に政治的な理由だけで参加しているわけではないように感じる。
 デモに参加することが、ファッションや流行みたいになっていることに疑問を感じる。デモに参加して何をしている? デモに参加してフェイスブックに写真をアップして帰ってくる。まるで、コンサートにでも行くみたい。
 反政府派には賛成はしているけれど、デモには参加しないという人がたくさんいるのは、こういうデモの性質によるからだと思う。デモに参加しないことが、意見がないということではない。私自身も傍観している。
 大切なのは、デモをして、それでこれからどうするかということ。議会を解散することになって選挙をやって、またプアタイが政権をとったらまた悪循環にはまるだけ。問題の根本が何であるかを考えずに、目先のことだけ見ていたら何も変わらないと思う。

(Gさん)
 デモには賛成しているし、何度か参加もしているけれど、デモをリードしている人のことはあまり支持していない。
 とにかくタイには変化が必要だと感じている。新しいことが必要だけど、選挙をやったらまた同じこと。できることなら、今いる政治家ではなくて、新しい世代に変わってほしい。ひょっとしたらあまり変わらないかもしれないけれど、少しは良くなるだろう。
 もし、中立の立場の人が出て、プアタイ、民主党の両方から認められるならいい。まだそれが誰なのかは分からないけれど。

(Hさん)
 私自身はデモには行かない。最初の頃、恩赦法に反対するデモには賛成していた。でも今はやりすぎ。たくさんの人を動員するだけ動員して、きちんとしたシステムになっていない。
 今のようにインラック首相追放を繰り返すだけであれば、どうしたってインラック首相は出て行かざるをえない。デモはもっとシステムにのっとって進めるべき。
 できることなら、今いる政治家には出ていってもらって、新しい人たちに政治をしてもらいたい。今ある2つの党でなくて、もっと新しい人たちに。実際にはむずかしい話だと思うけれど。
 それにしても、デモの影響で渋滞がひどいのにはもううんざり、早く終わってほしい。

(Iさん)
  汚職や不正にまみれたタクシンの政治を追放しようというデモには大賛成。グッズも買って、仕事で外に出れば1人でも参加している。
 でもステープ(元民主党副幹事長)のことは、100%信用しているわけではないから、彼の動向は注視している。民主党のこともそれほど応援しているわけではないけれど、民主党のかかげる国の発展に向けた政策や、いかに今の政治が悪いかを示している点は支持している。
 今のままでは、将来にわたって子どもたちにも借金を背負わせなくてはいけない。子どもが生まれたばかりだし心配だ。
 編集部では、各々じっと思いを秘めていると思う。それはそのまま心にしまっておくほうがいい。この辺りは、タクシン派も多いし、デモを支持していることを表に出したら殴られそうだ。
 デモに参加するのは疲れるけれど、ずっとデモを続けている人は自分よりももっと疲れていると思う。だからサポートしたい。
 民主党のアピシットが首相になってくれたら、国を良くしてくれるにちがいない。彼の発言は明確だし台本がなくたって語れる。インラックとは大違いだ。

(Jさん)
  私自身、外国人と同じく今回のデモには驚いている。笑いがたえず、和やかな雰囲気で、美味しいごはんに、音楽まで楽しめる。前回の赤シャツのデモのときのような恐ろしさはない。
 デモというと過激であるはずだけど、そうではない。愛らしいデモだと思う。今回のデモが起きたことで、むずかしい憲法に関する知識が得られたし、国民が憲法について考えるきっかけになったことはいいと思う。それに、今までのように偏った見方だけでなく、いろんな立場、角度から政治についてたくさんの意見が聞くことができ、それぞれが考えるきっかけとなったことはすばらしい。
 自分はデモには参加しないが、デモには賛成しているし、水を寄付したりして応援している。聞いた話では、デモには参加できないけれど、食事代などを寄付する人によって1時間で10万バーツ(約30万円)も集まったらしい。
 どれだけ長引いたとしても渋滞がひどくてもかまわない。デモの先に、タイが将来いい国になるという希望があるから。
 今問題なのは、お金と権力にしがみつく悪い政治家がたくさんいるということ。その政治家自身は自分が悪いということに気づいていないということ。このままではタイの社会は荒んでいくばかり。
 タイ人同士、本当は愛し合っているし、助け合いの心を持っている。自分のことばかり考えないで、国全体、社会全体のことを考えよう、と今回のデモは国民に訴えている。

(Kさん)
 恩赦法に反対するデモには賛成していたけれど、その後、政府に圧力を加えて追放させようとするデモになってからは賛成していない。ただの権力の奪い合いだ。
 もともと2つの党どちらも支持していなく、どちらにも悪い部分があると思っている。ただ、タクシン派のほうがより不正や汚職が多いだろう。
 議会を解散することになったけれど、あまり賛成できない。気に入らないからデモで圧力をかけて、議会を解散させる、これからも気に入らないからといって同じやり方で、デモと解散を繰り返すのか。任期をまっとうさせてから選挙をするほうがいいと思う。

(Lさん)
  今回のデモには賛成できないし、終わりのないやり方は間違っていると思う。今のところ、まだそれほど深刻な事件は起きていないけれど、選挙があっても、またその後もきっと何かまた起こる。
 今は2つの派が対立して、まったくお互いを認めようとしない。大切なのは、話し合い、同意し合い、国を平穏にするためのルールを作ることだと思う。アメリカやイギリスみたいなパーフェクトな民主主義でなくてもいい。みんなが納得できる形のタイスタイルのルールでいいと思っている。
 恩赦法の反対でデモが始まって、ちょうどそのタイミングに反政府が乗っかった。これからも、それぞれにタイミングがあって、終わることはないだろう。
 みんな同じタイ人。この国から逃げることはできない。だったら、認め合える新しいルールを模索するべき。本当のところ、そのルールが選挙であって、過去にも同じことが繰りかえされてきたわけだけど。

(Mさん)
  外に出て反政府を訴える今回のデモはいいことだと思う。今の政府の政策は自分たちのことしか考えていないし、兄の代から続いて不正だらけ。デモによって、政府を追放することができれば、国は今よりもいい方向に向かうだろうと思っている。
 自分も3回デモに参加した。今の政府は貧しい人にお金をばらまくばかり。貧しい人が仕事を持てるようにするなど政府は違ったやり方で支援するべき。
 正直なところ、まだ国の先ははっきり見えない。できることなら、今までの政治家でなく、新しい政治家に国の発展を託したい。
 民主党のこともそんなに好きではない。ステープの言っていることにも現実的でないところもある。でも今の政府はもっともっと嫌いだ。
 

(文・沼館幹夫/撮影・DACO編集部)