フィリピン
2014年9月23日 志賀和民

老後はフィリピンで介護生活を送れるのか
フィリピン介護ビジネスの現状

なぜ介護ビジネスが成り立たないのか

 それではなぜ、フィリピンでは介護ビジネスが成りたたないのか。

1)フィリピン人は、年老いた親を家族の宝として大事に扱い、自分の親を介護施設に送りだすなどという発想はない。それに大家族なので人手はいくらでもあり、年老いた配偶者がひとりで面倒を見なければならないというような状況はありえない。

2)仕事や子育てなどで、家族が介護が必要な親の面倒を見ることができないとしても、住む場所と食事を提供し、ちょっとした小遣いをやれば人手はいくらでも集まる。メイドやヤヤ(子守)を雇うとしても月額数千~1万円で済むから、人手不足の問題はない。ここでは人口が多くて貧しいということが逆にメリットになっている。

3)認知症になったとしても、これは単にボケであって、年を取って赤子に帰るごく自然の現象ととらえ、病気だとは思わない。老人も長年親しんだ家族と住み慣れた住居で暮らすから、凶暴化したりしない。

4)フィリピンには「神の意志に任せる」という都合の良い言葉があって、延命措置を行なって老人をむやみに長生きさせるようなことはしない、あるいは経済的にできない。フィリピンにも健康保険はあるものの微々たるもので、無益な延命のための費用を国が担って社会資源を無駄使いするようなシステムはない。

5)フィリピンに居住する日本人は、フィリピンの家族あるいは友人に囲まれて、自分が将来介護施設に入る、あるいは入らなければならないという発想がなくなる。その気になれば介護士を雇って自前で介護施設並みの状況がつくれるのだ。

6)近い将来介護が必要になるであろうという前提で70ないし80代のお年寄りの日本人がフィリピンにやってくることある。そのほとんどが、息子の配偶者がフィリピン人で、若い嫁に孫の面倒と自分たちの介護を同時にやってもらおうという心積もりだ。息子だけが生活の糧を稼ぐために日本に残ることもあるが、高齢者には日本の年金があり、生活費も日本の数分の一で済むので、妻の実家の人々との幸せな日々を過ごすことができる。そこに介護施設が入り込む余地はない。

フィリピンで暮らし、骨を埋ずめようとしたら、フィリピンに家族と呼べるような人が必要だ。それには長い年月と、彼らの本当の信頼と愛が必要だ(中央が筆者)【撮影/志賀和民】