中国
2015年1月19日 大橋史彦

各方面に影響を及ぼす上海転倒事故の余波

旧正月商戦にも影響!?

 規制は観光地だけでなく、イベントにも波及している。

 上海では、元宵節(旧暦の1月15日)に豫園などで毎年開催されるランタン祭りの中止が決定された。同市郊外の松江区では、塔園のランタン祭りを含め、元旦から春節、元宵節までに開催予定だった14ものイベントの中止が決定された。

 また4月に開催される上海モーターショーでは、コンパニオンが禁止される方向だ。発表のタイミングがよすぎるので、これも外灘での事故が影響しているのではないかという声が専らだ。このままだと、今年末に開業予定の上海ディズニーランドも延期になりかねないのでは。

 イベントの中止の動きは上海にとどまらず、河南省鄭州市では、シンガポールの人気歌手、林俊傑のコンサートが中止されることになった。北京市では、多くの商業施設で安全対策が強化されるまでプロモーションイベントが禁止されたほか、あるスーパーの店舗は開業の延期を余儀なくされた。政府のお膝元ゆえに北京市は過敏に反応しているのかもしれないが、上海にも飛び火する可能性がある。そうなると、2月の旧正月商戦にも影響しかねない。

 事態を収束させるためにも、当局は原因究明と情報の開示を徹底するべきなのだが、いつもどおりの情報の隠蔽と過剰な自主規制だ。臭いものには蓋をして、ほとぼりが冷めるのを待つ。一党独裁政権を維持するためのセオリーだ。

 現地の新聞に、こんな報道があった。被害者のうち、52名が保険に加入しており、支払総額は385.6万元(約7300万円)に達するが、うち251万元(約4700万円)が支払済だという。事故から2週間も経たないうちに保険金が下りるのは奇妙だが、意外にもネット上ではそれを評価する声が多い。被害者数を過少に公表しているという批判をかわすとともに、被害者や遺族の口を封じる狙いがあるのではあるまいか。

 ネット上では、上海市や外灘を管轄する黄浦区政府を批判する声が多い。当局は追って調査結果を発表するとしているが、それがいつものようにおざなりなものだったら、事態は長期化しかねない。

2013年上海モーターショーに色を添えるコンパニオン(※2014年は北京で開催)【撮影/大橋史彦】

(文・撮影/大橋史彦)

著者紹介:大橋史彦(おおはし・ふみひこ)
福島生まれ、埼玉育ち。法政大学卒業後、編集プロダクションに勤務。2006年に中国移住。蘇州、北京、広州で現地情報誌の編集・制作に携わり、08年より上海在住。情報誌の編集長を経て13年9月よりフリーランス。日本のビジネス誌や書籍への寄稿も多数。