ラオス
2015年6月6日 森 卓

120万円のピアノが売れる
ラオスの音楽事情

クラシック楽器は富裕層のステイタス

 さて、クラシック系の楽器はどうだろう。全体の中でもマイノリティーといってよい。クラシック人口は、おそらく国内(総人口700万人弱)に数百人ぐらいではないかと、関係者は話す。楽器自体が高価なこともあるが、読譜能力も必要なので、それなりの時間とお金をかけなければ人前で演奏することも難しい。

 お金をかけなければできないこと、それが、最近では、富裕層の間でのステイタスとなっている。ハードルが高いほど、富裕層の間では流行になる傾向があるようだ。

 某日系楽器代理店でのピアノの最安値は電子ピアノで15万円ほど。スタンダードなクラスで、アップライトピアノも含めて30万円前後が並べられ、これらがコンスタントに売れているという。600万円ほどするグランドピアノは流石に料金を聞いて驚かれることが多いそうだが、120万円ほどのベビーグランドは、これまでに数台売れた。

 もし、弾かなくなったとしても家の家具として高級感が漂うので、ホームパーティーを好むラオス人上流層に受けているという。料金目安を聞かれた時は「車1台より安いですよ」というと、1人1台(趣味で数台という人も多い)所有がざらの上流層には割安感が漂いはじめる、と販売店員はいう。ある上流層のラオス人は「今、ラオスでは中途半端なものよりも、高いもののほうが売れている」と言っていた。

音響機器コーナー。お祭り好きなラオス人は爆音を好む【撮影/『テイスト・オブ・ラオス』】

 楽器が売れている背景には、子ども教育の過熱がある。プチバブルで出てきた新富裕層が考えるのは、子どもたちの将来。自分たちと同じように子孫も恩恵を受け続けなければならない。

 英語をはじめとする外国語の習得、コンピュータースキル、ビジネスマネージメントスキルなど習い事のバリエーションは増えてきているが、音楽は6歳から始めることができる(日本では絶対音感取得は3歳までといわれているとか)。教室に通わせれば、ゲームなど他の遊びや、非行に走ることも少なくなると、ラオスの親御さんたちは考えている。

 両親が老いた時は、子どもが当たり前のように面倒を見るのがラオス人社会。自分の子どもたちへの教育は、愛情もあるが、きちんとリターンも考えた投資であると、現地在住が長い外国人は言っていた。

老舗の楽器店。店内は所狭しと無名有名メーカーの商品が並ぶ【撮影/『テイスト・オブ・ラオス』】

(文/森卓 撮影/『テイスト・オブ・ラオス』)

筆者紹介:森卓(もり・たく)
1977年大阪生まれ、富山育ち。元調理師。約8カ月のバックパッカー旅行の後、2002年よりラオス在住。旅行会社勤務を経て、日本語フリーペーパー 『テイスト・オブ・ラオス』発行。ラオス情報ポータルサイトLAOSTA(http://laosta.asia/news/)運営、TVや雑誌などメ ディアコーディネートのかたわら、現在、日ラオス外交関係樹立60周年記念映画を制作中。