アラブ
2015年5月28日 岩永尚子

教えて! 尚子先生
アラブとアジアのイスラム教では、同じイスラム教でも違いがあるのでしょうか?

【中東・イスラム初級講座・第23回】

IS(イスラム国)の活動によって、アラブのイスラム教徒への関心が高まる昨今。しかし世界最大のイスラム国はアジアのインドネシアです。世界に16億人のイスラム教徒がいるなか、その思想、考え方に地域差はあるのか、違いはなんなのか、中東研究家の尚子先生がわかりやすく解説します。

●関連記事:「イスラム教」とは何ですか?

 第21回の「イスラム教とは何ですか?」で、世界には16億人のイスラム教徒が存在し、世界の中では4人に1人がイスラム教徒ということになると説明しました。

 では、実際にはイスラム教徒はどの地域に多いのでしょうか? そしてイスラム教の中にも地域差があるのでしょうか? 今回はこうした問いに答えるために、アジアで最もイスラム教徒の多いインドネシアの事例を中心に説明してみたいと思います。

イスラム教徒の62%が住むアジア

 イスラム教というと「中東」というイメージが強いですが、2010年の統計では実際にイスラム教徒が最も多く住んでいるのは、アジアの約10億人(62%)で、次に中東・北アフリカ約3億人(20%)、アフリカ南部約2億5000万人(15%)、残る3%程度が欧州です。

 国別にみると、イスラム教徒が多いのは、インドネシア(2億人)、インド(1億7000万人)、パキスタン(1億6000万人)、バングラデシュ(1億3000万人)、ナイジェリア(7700万人)、エジプト(7700万人)、イラン(7400万人)、トルコ(7100万人)、サウジアラビア(2600万人)の順になります。

 これもまた中東が少なく、ちょっと意外な感じがするかもしれません。中東諸国では全人口に占めるイスラム教徒の割合は高いものの、そもそも人口が少ない国が多いため、このような結果となっているのです。

 欧州にいる3%のイスラム教徒については、ドイツ、フランスにはそれぞれ約470万人が居住しており、総人口に占める割合は6~7%程度といわれています。イギリスには270万人、イタリア220万人、オランダ、スペインにも約100万人のイスラム教徒が居住していると推定されています。

 欧州のイスラム教徒は総数が少ないものの、移民の増加と出生率の高さから、人口に占める割合が比較的短期間で上昇している、または上昇するであろうといわれています。たとえばイギリスのイスラム教徒は、1990年には117万人程度と推定されていましたが、2010年には2倍、2030年には560万人に増加すると予測されています。

 では、この世界中のイスラム教徒の間には地域差はあるのでしょうか? インドネシアが世界最大のイスラム教国と聞くと、なぜか奇妙な感じがするのは、イスラムのイメージとインドネシアという身近で親しみのあるイメージとが、かけ離れているからかもしれません。中東のあの真っ黒な衣装の女性のイメージは強烈ですし、またインドネシアのあの色鮮やかなバティックの布のイメージからは、なかなか世界最大のイスラム教徒の国とは想像がつきませんね。

 ですが、東南アジアでも、インドネシアを筆頭にマレーシアやブルネイなどの島しょ部ではイスラム教が優勢です。7世紀にアラビア半島で成立したイスラム教は、交易を通してインドの西海岸から布教が開始され、11世紀にはインドでイスラム王朝が成立しました。さらに、海のシルクロードを通じて東南アジアにも達し、13世紀にはスマトラ半島に、15世紀にはマレー半島でもイスラム教を国教とする王国が成立しました。島しょ部でイスラム教徒が多いのは、海のシルクロードを通じてイスラム教が布教されたなごりなのです。

昼下がりの礼拝所=フェズ, モロッコ【撮影/安田匡範】